食肉の化学:死後硬直やミオグロビンの変化など

新鮮な牛肉の切り口はミオグロビンの暗赤色を呈し、ヘム色素の鉄は二価である?

食肉に含まれる色素には、ヘム鉄を含む色素たんぱく質のミオグロビン(肉色素、筋肉に含まれる)、ヘモグロビン(血色素、血液に含まれる)などがあります。
食肉中のミオグロビンとヘモグロビンの含有比は5:1であることから、食肉の赤色は筋繊維の細胞質に存在するミオグロビンに由来するといえます。

ミオグロビンは酸素親和性がヘモグロビンよりも高く、ヘム鉄が酸素と結びつくことで筋肉へ酸素を供給するとともに、筋肉組織内の酸素貯蔵庫としての役割を果たしています。
食肉の色の変化を以下に示します。

食肉の色の変化
※亜硝酸塩などの発色剤を添加した際に生じる発がん性物質「ニトロソアミン」の生成を抑える

新鮮な赤肉のミオグロビンは還元型(Fe²⁺)であり、暗赤色を呈しますが、空気に触れる状態でしばらく放置すると、表層部でのみ酸素と結合する酸素化(ブルーミング)によりオキシミオグロビンに変化し、鮮赤色になります。
さらに長時間空気にさらすとミオグロビンのヘム鉄が酸化されて三価の赤褐色のメトミオグロビン(Fe³⁺)に変化します(メト化)。
生肉を加熱すると灰褐色に変化しますが、これはミオグロビンのたんぱく質のグロビンが加熱変性すると同時に、メトミオクロモーゲン(Fe³⁺)に変化するためです。
食肉加工品のハムやベーコンでは、長時間空気に触れていても、色の変化はみられません。これは、製造工程において亜硝酸塩、硝酸塩などの発色剤を添加し、ミオグロビンを色調が安定なニトロソミオグロビンに変化させているためです。

(答え) 〇

【参考文献】
食品の成分 食肉の栄養知識/食肉に含まれる栄養素の特性とその働き
 http://kumamoto.lin.gr.jp/shokuniku/eiyochisiki/tokusei_hataraki/seibun2.html
東京アカデミー.2020年版 管理栄養士国家試験対策 完全合格教本 下巻.
七賢出版株式会社,2019,128~129p
和泉秀彦/三宅義明/舘和彦.栄養科学ファウンデーションシリーズ 食品学.
朝倉書店,2014,86~87p

ミオグロビンは酸素と結合してオキシミオグロビンとなり、ヘム色素の鉄は三価となる?

当ページ上記にあります『新鮮な牛肉の切り口はミオグロビンの暗赤色を呈し、ヘム色素の鉄は二価である?』の解説をご覧ください。

(答え) 二価
ミオグロビンは酸素と結合してオキシミオグロビンとなり、ヘム色素の鉄は二価のままである。

生肉の切り口は長時間放置するとメトミオグロビンを生成して褐色に変化する?

当ページ上記にあります『新鮮な牛肉の切り口はミオグロビンの暗赤色を呈し、ヘム色素の鉄は二価である?』の解説をご覧ください。

(答え) 〇

食肉に亜硝酸塩を添加すると、ミオグロビンは主にニトロソミオクロモーゲンに変化する?

当ページ上記にあります『新鮮な牛肉の切り口はミオグロビンの暗赤色を呈し、ヘム色素の鉄は二価である?』の解説にて記載しましたが、ここでは更に端的+プラスで記載したいと思います。
生の状態の食肉の切断面の暗赤色はミオグロビンの影響によるものです。
切断したときの鮮紅色はミオグロビンの酸素との結合によるオキシミオグロビンの影響によるものです。
肉を加熱したときは、一般に灰褐色になるのは加熱によってグロビンが熱変性をおこし色素の保護作用を失って、酸化がすすみメトミオグロモーゲンの影響で灰褐色を呈するのです。
また、ハムやソーセージなどの製造時に添加される亜硝酸塩によりミオグロビンはニトロソミオグロビンに変化し、桃赤色となります。これを更に加熱することでニトロソミオグロモーゲンに変化します。

【参考文献】
科研コラム 一般社団法人食肉科学技術研究所
http://www.shokunikukaken.jp/topics/438/
管理栄養士の過去問「第48942問」を出題  過去問.com
https://kakomonn.com/kanrieiyoushi/id/48942/

(答え) ニトロソミオグロビン
食肉に亜硝酸塩を添加すると、ミオグロビンは主にニトロソミオクロモーゲンに変化する。