脂質の酸化反応

食品の劣化には、腐敗以外に脂質の酸化による変敗があります。脂質が酸化する仕組みを知ることにより、酸化を遅らせたり防いだりできます。

以下には油脂の酸化に関して、10問の正誤式の問題があります。見出し(目次)の文章を正しいか間違っているかを考え、間違っている場合は正しい表現を考えてみて下さい。

※私共の研究チームによるプロジェクトがクラウドファンディングに掲載されています。私共の研究や木の良さを知って頂くために、是非ご覧頂ければ幸いです。

油脂の変敗では、主に飽和脂肪酸が自動酸化する?

油脂の酸化は食品成分の変化の中でも代表的な反応となっています。油脂に酸化が起きることで、栄養性、物性、嗜好性が低下するだけでなく、毒性を持つこともあります。脂質の自動酸化とは、常温でゆっくりと進行する脂質の酸化現象です。その自動酸化は不飽和脂肪酸でのみ行われます。

(解答) ✖ 不飽和
油脂の変敗では、主に不飽和脂肪酸が自動酸化します。

【参考資料】
いらすとや 料理用油・サラダ油のイラスト  https://www.irasutoya.com/2014/07/blog-post_6763.html

オレイン酸は、活性メチレン基を有する?

自動酸化のされやすさといてはオレイン酸を1とおくと、リノール酸は12倍、リノレン酸は25倍にも及びます。理由としては、リノール酸のように2つの二重結合に挟まれた炭化水素(活性メチレン基)の部分は水素が引き抜かれやすく、その部分から酸化反応が開始されます。

(解答) ✖ リノール酸など
リノール酸(やリノレン酸などといった自動酸化が活発な脂肪酸)は、活性メチレン基を有します。

自動酸化は、不飽和脂肪酸に水素が添加されることにより開始する?

※上記問題『オレイン酸は、活性メチレン基を有する?』の解答解説をご参考ください。

(解答) ✖ 引き抜かれる
自動酸化は、不飽和脂肪酸に水素が引き抜かれることにより開始します。

脂質の自動酸化は、重合反応だけでなく分解反応も起こる?

次の問題『油の熱酸化が進行すると、ヒドロペルオキシドが蓄積する?』の解答解説にて記載しております通り、ヒドロペルオキシドの重合も行われますが、同時に分解も行われています。

自動酸化のながれをご紹介いたします。まず、何らかの機構で不飽和脂肪酸から水素結合が引き抜かれます。よって、アルキルラジカルといった物質が生成されます。この物質に³O₂が結合し、ペルオキシラジカルとなります。この物質は、未酸化の不飽和脂肪酸から新たに水素原子を奪うことでヒドロペルオキシドとなりあいてに不対電子を残します。自動的に次の不飽和脂肪酸が酸化されていき、まさに自動的に酸化反応が進みます。

ブチルヒドロペルオキシド
ヒドロペルオキシドの例(ブチルヒドロペルオキシド)

(解答) 〇

脂質の酸化により生じるヘキセナールやヘキサナールは色戻りの原因となる?

精製された油は色も薄く無臭ですが、酸化の進行とともに油特有のにおいを発するようになります。油酸化のごく初期から感知されるものを戻り臭、さらに、酸化が進んだ場合を変敗臭とよびます。戻り臭はリノレン酸含量の高い大豆油で起こりやすくなっています。この原因物質は、2-ペンチルフランや3-シス-ヘキセナールが考えられています。この他にも、100種にも及ぶ揮発性物質が酸化油中から同定されています。
また、酸化により共役ジエン構造が生じるため、油脂の色が濃くなります。この変化を色戻りといいます。また、この色戻りの原因物質の一つとしてɤ-トコフェロールが酸化されて生じるトコレッドああります。

(解答) ✖ 戻り臭
脂質の酸化により生じるヘキセナールやヘキサナールは戻り臭の原因となります。

自動酸化反応は、金属イオンの存在により抑制される?

『油の熱酸化が進行すると、ヒドロペルオキシドが蓄積する?』の解答解説をご参考ください。

(解答) ✖ 促進
自動酸化反応は、金属イオンの存在により促進されます。

クエン酸は金属イオンをキレートすることにより、脂質酸化を抑制する?

脂質酸化において、物理的酸化防止および化学的酸化防止がおきます。化学的に酸化を抑えるものを抗酸化剤といいます。これらの抗酸化剤によって計五つの作用が進行します。ラジカルの捕捉作用¹O₂のエネルギーの消光作用金属イオンの捕捉作用還元作用相乗効果があります。そのなかで今回の問題に対応しているのが金属イオンの捕捉作用です。クエン酸やシュウ酸および合成抗酸化剤であるEDTAなどがあります。これらは金属イオンを捕捉することで三価の促進因子を取り除きます。よって脂質酸化は抑制されます。

(解答) 〇

光増感酸化反応では、食品中の酵素が関与する?

天然色素として油脂に混在するクロロフィルや食品添加物色素などは、可視光を吸収して励起され、そのエネルギーを³O₂にわたして¹O₂に変化させます。変化後のほうが反応性が1000倍ほど強く、生じた¹O₂は直接不飽和脂肪酸の二重結合を攻撃し、非ラジカル的にヒドロペルオキシドを生成するといった反応を光増感酸化反応といいます。光増感酸化反応は二重結合さえあればその数に依存はなく二重結合数が二倍にもなるヒドロペルオキシド異性体が生成されるといった特徴もあります。

次にリポキシナーゼについて説明させていただきます。リポキシナーゼとは植物界に存在する酵素です。リノール酸やリノレン酸など、特定の構造を持つ脂肪酸に³O₂を添加することで、ヒドロペルオキシドを生成します。保存、加工、調理など細胞が傷んで接触すると反応が進行します。野菜や大豆の青草臭はリポキシゲナーゼ反応により生じるヒドロペルオキシドが分解してできたヘキサナールとヘキセナールなどといったアルコールやアルデヒドに起因があると言われます。防止策としては、酵素に変わりはない為、加熱による失活させることで、酸化を防止することができます。

(解答) ✖ 色素。リポキシゲナーゼの解説も。
光増感酸化反応では、食品中の色素が関与しています。

光増感酸化反応では、三重項酸素が直接反応する?

油脂の酸化には活性酵素が用いられています。不対電子をもつ原子あるいは原子団をラジカルといいます。これは、ラジカル反応とよばれる連鎖反応を起こす反応性の高いものでもあります。通常の酸素の形がこの形であり、基底状態の酸素、あるいは三重項酸素といわれています。酸素分子がほかの気体分子に比べて反応性が高いのは二個の不対電子をもつビラジカルであることが起因としています。さらに、³O₂が外からエネルギーを得て励起された状態のものを一重項酸素といいます。この他にも、³O₂がほかの化合物から電子を一つ引き込んだ分子種をスーパーオキシドまたはスーパーオキシトアニオンと呼ばれています。さらには、ヒドロキシラジカル過酸化水素なども活性酵素と呼ばれています。

『光増感酸化反応では、食品中の酵素が関与する?』の解答解説にも記載しています通り、光増感酸化反応では、可視光などを吸収し、そのエネルギーを³O₂にわたして¹O₂に変化させます。これはまさに、上の文章「³O₂が外からエネルギーを得て励起された状態のものを一重項酸素といいます」となるため、反応に使用されるものは一重項酸素であると言えます。

(解答) ✖ 一重
光増感酸化反応では、一重項酸素が直接反応します。

油の熱酸化が進行すると、ヒドロペルオキシドが蓄積する?

脂質の酸化は自動酸化以外に金属酵素などによっても引き起こされます。このような自動酸化以外によってしょうじたヒドロペルオキシドも自動酸化の時と同様に分解、重合されます。さらには、これらの過程で生まれた生成物が自動酸化のラジカルの引き金となるという説も存在しています。

(解答) ✖ 
油の熱酸化が進行すると、ヒドロペルオキシドが蓄積されません。

最後に、当サイトにおいて食品の変化の中でも、褐変について特化したページもございます。是非こちらの『食品化学 変化・褐変』のページもご参考ください。

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