SPF・PA・UV耐水性試験の予備試験

日焼け止めによる紫外線からの予防効果を測定する試験は、ISOに則って実施することが求められています。本試験を実施する前に数値を予測する意味でも、予備実験は重要です。ISOに則って実施すると本試験に近い費用を要してしまうので、予備試験では極力コストを抑えた内容で実施しています。ISOのご理解を頂くことも含めまして、本試験とは異なる内容を説明しています。

それぞれの試験に関する詳細な試験方法は以下をご参照下さい。

SPF・PA・UV耐水性試験の全てに共通するISO除外の項目

予備試験では、主に以下の内容についてISOを満たしていない項目になります。

  • 例数は2~3名
  • 照射部位を腕や脚で実施
  • スペクトルの波長が完全に準拠していない
  • 標準品を利用していない
  • 報告方法が準拠していない

例数(人数)や統計解析

ISOでは、最低10名での実施が求められていますが、予備試験では2~3名で実施をしています。2名で明確な結果が得られた際は、3名目を省略することもあります。本試験では統計解析を実施しますが、2~3名では数値化や統計解析が不可能であるため、これも自動的に除外になります。

照射(測定)部位

ISOでは背中で実施することを求められています。細かく指定されており、肩甲骨の間からそれ以下、ウエストより上の部位とされています。予備試験では、腕に照射をして実施しています。肩や二の腕に照射することもありますが、肘より先で実施することが多いです。そのため、ISOに規定されている「照射後は太陽光に晒されないこと」が満たされない場合もあります。

加えて、肘から前の部分は「参加部位が日焼けをしていない」といった条件も満たせておらず、「前回の測定から8週間以上経過していること」といった条件を満たさないこともあります。ですが、日焼けの判定ができる部位を使って実施します。

スペクトルの波長や光線

ISOを満たすための最大の難関になっています。そのため、照射装置が高額になることが多く、最近では1,000万円未満を提示頂けることが稀になりました。その高額機器を提供しているメーカーでも、ISOへの完全準拠を保証してくれる訳ではなかったので、本研究グループでは独自に試行錯誤と確認を実施しています。

現在、ISOに則り300nm未満と400nm以上の波長をカットして、紫外線波長のみを照射できるようにしています。しかしながら、ISOの要件が非常に厳密であり、規定よりも10~15nm程度、やや低波長寄りの波長になっています。また細かいことですが、ISOは1cm2の光を照射することが求めれていますが、これは直径8mm以上になります。現在は直径5mmの照射をしており、これも業者さんに特注を依頼しています。

標準品の利用

ISOでは、SPFの数値やPAグレードが既に分かっている標準品を利用することが義務付けられています。研究の信頼性を高めるためにプラセボやコントロールを使うことは一般的であり、この方針には同意します。しかしながら、この標品が海外製で非常に高額であり、1オンス(約28g)で税込み8万円以上という、とんでもなく高額な「日焼け止め」です。しかも、SPF50+など高い測定結果を得るためには、標準品を2種類使うことが求められます。

標準品がなくてもSPF値の計算は可能であるため、予備試験では標準品を省略しています。

報告方法

ISOでは報告する書式や必要な項目が定められています。こちらも信頼性を保障するための重要な情報でもあります。ですが、一般的な方々には意味不明な数値が多く、求められている書式だけは判断が難しいです。

予備試験ではメールの本文にて報告をしています。ISOを満たすことより、今後の測定や開発となる判断をご提供することを主眼に置いています。

UV耐水性(ウォータープルーフ)試験に関するISO除外の項目

ウォータープルーフの試験では、水質などさらに細かな要件が求められます。UV耐水性の予備試験では、前述の共通項目に加えて、以下の内容がISOを満たしてない項目になります。

  • pHを調整していない
  • 電気伝導率を調整していない
  • 水流を調整していない
  • 水温が完全に準拠していない

pHの調整

ISO16217では水の条件も細かく規定されています。水道水は概ね中性ですが、水道水質基準値としてpH5.8〜8.6と定められており、ISOに定めるpH6.5〜7.5よりもやや広く、酸(ISOの規定ではクエン酸)を追加する必要があるケースも考えられます。概ね中性であることを試験紙で確認していますが、都度の調整をしていません。

電気伝導率の調整

超純水は電気をほとんど通さないですが、一般的に利用される水は塩素消毒など不純物が含まれることから多少の電気を通します。それをシミュレートするためか、ある一定の電気伝導率を超える必要があります。また、規定値から不足するようであれば塩化ナトリウムを追加するよう書かれています。ある一定量の食塩を入れておりますが、都度の測定はしていません。

水温の調整

ISO16217と18886にて、水温は30±2℃と規定されています。測定部位を水に漬ける前に約32℃にすることを確認してから始めますが、徐々に温度が低下しています。規定されている20分間に加温せず、規定の温度からやや低下することも考えられます。

水流の調整

この条件を除けば、一般的な室内温水プールで実施することも可能ですが、水流の範囲が決められており、特別な施設(水流が一定になりやすい円形のジャグジーなど)が求められます。予備試験では、腕で実施することも含めて、ISOの条件に近くなるよう、ゆっくりと手を動かすことにしています。

予備試験でもISOを満たして実施している項目

ISOを満たしていない項目が以上のようにありますが、逆に言えば、上記以外はISOに準拠して実施しています。以下がその一例です。

  • キセノンアークランプを使っている
  • 色差計を利用して肌を測定してITA°の値を計算している
  • 塗布の量や塗布方法をISO記載通りに進めている
  • 1サンプルにつき照射量を変えて5つのスポット測定を実施している
  • 規定通りの日焼け判定を実施している

紫外線照射装置

基礎研究や論文から当初は研究室に多く見られる紫外線照射装置で試行錯誤を繰り返していました。類似のスペクトルも得られるのですが、ISOに完全準拠させるにはキセノンランプを使う必要があることが判明しました。その他の紫外線照射装置よりもキセノンランプの方が使い勝手の良い部分があり、概ねISOに近い紫外線照射装置を利用しています。

肌色の測定

肌の色は色差計という装置を使います。照射する色温度が6500Kであることや検出器の口径など詳細に決められており、一般的には高額な機器が多いのですが、比較的安価で美容用途にも使えそうな機器にであうことができました。美白に関する研究全般にも利用化です。ISOは、色差計から得られた数値をITA°(ndividual Typology Angle)という値を計算して、その範囲内の被験者に参加してもらう必要があると記載されています。予備実験でも、条件を満たす方々に参加してもらっています。

日焼け止めの塗布

塗布をする日焼け止めの量も規定されており、1cm2あたり2mgと決められています。さらに、その誤差の範囲や、秤量する電子天秤の精度にまで言及されています。一般的な実験器具は揃っていることから、この要件は問題なく満たすことができます。また、塗布してから測定するまでの時間など、コストに関係ない細かな項目もISOを満たすように実施しています。

5つの照射量を検討

ISOには5段階を設けるよう定められています。例えばSPF50を基準とするのであれば、40, 45, 50, 55, 60に相当する照射をするといった具合です。ISOでは、さらに細かく規定されていて、このように等差で段階をつけるのではなく、等比で設定するように決められています。つまり、SPF50を基準として1.1倍とするのであれば、41, 45, 50, 55, 61となります。倍率として、ISOには1.12, 1,15, 1.2, 1.25という数字が書かれていますが”such as”と書かれており、他の数値でも許容であることが窺えます。

SPF50+を目指される場合が多いので、その場合はSPF42, 46, 51, 56, 62を基準とした照射量を基本とします(SPF値が51以上は全てSPF50+表記となります)。

数値の判定方法

塗布から20±4時間の範囲で肌の紅斑などを判定するように書かれています。肌の紅斑を判定するのはすぐに終わりますので、前日と同様の集合時間にしてもらっています。これについては、被験者さんの多くが他の研究にも参加してくださっており、ルーチンに近い進め方になります。

SPFの数値を判定するために、照射する紫外線のエネルギー比を使って計算しています。本試験では、そのエネルギーをJ/m2の数値に変換してから割り算をすることになっていますが、割り算なので、複雑な計算をしなくてもSPF値を計算することが可能です。例えば、無塗布の場合に10秒で紅斑が出た場合、10倍の光量を50秒照射(エネルギーとして50倍)しても紅斑が出なかった場合、SPF50+の可能性が高い、といった具合です。