SPF(紫外線防止効果)の表示に「UV耐水性」「ウォータープルーフ」の表示をするためにヒト試験が必要です。SPF試験の概要についてはSPF測定マニュアルをご参照ください。
ウォータープルーフ測定試験の概要
日本化粧品工業連合会のページにある図が大変分かりやすく書かれています。塗布をして紫外線照射をする前に水浴をするという条件になっています。20分の水浴だけでも「ウォータープルーフ」「UV耐水性」などの表示が可能ですが、以下の通り、水浴の回数が多くなると耐水性に星マークを付けることも可能です。

https://www.jcia.org/user/common/download/business/guideline/taisui/taisui-keepinmind-20211015.pdf
SPF試験との共通点
詳細はSPF測定マニュアルに記載しているISO24444をご参照頂く必要がありますが、基本的には以下の通りSPF試験と進め方が共通しています。
- ITA°を計算して肌色の判定をする
- 全員に標準品を塗布する:標品P2が耐水性を持っています
- キセノンランプを利用して紫外線照射をする
- 翌日(~24時間以内)に肌の色の変化を判定する
ウォータープルーフ試験の実験条件:ISO18886準拠
ISOには「水が常に循環していること」と書かれています。つまり、測定部位をそっと水に漬けておくなどはISOに沿っていない試験方法になります。細かくは以下のように条件が決められています。
- 背中を壁などに接触させずに座位で水浴をする
- 塗布した部位をタオルで拭かずに15分以上乾燥させる
- 水滴が見えなくなってから1時間以内に測定を実施
- 2回以上水浴をする際には5~20分の休憩を設ける:上記と同様にタオルで拭かない
ウォータープルーフの計算方法
まずは以下の計算式で各個人の耐水率を計算します。
各個人の耐水率 =(水浴前のSPF値-1)÷(水浴後のSPF値-1)× 100
例えば、普段のSPF値が51で水浴後のSPF値が31に落ちていた場合、耐水率は60%という計算になります。その後、さらに以下の計算をします。
最終耐水率 = 各個人の平均耐水率 – 標準誤差 ÷ 人数-1の平方根 × t値
これは、ISOに書かれている計算式の方が理解しやすい方もおられるかと思い、その計算式を以下に記載します(nは自由度で人数マイナス1)。
meanWR% = meanWR%i – d
d = t × s / √n
上記のt値は以下を利用します。t値の考え方は、当サイトのt検定を解説したページもご参照ください。

上記の表を都度参照するのは面倒かと思いますので、Excelの関数”TINV”を使う方が実際の運用に即しているかと思います。TINV関数はt値を返す関数で、90%信頼区間、人数が10人の場合は”TINV(0.1,9)”という関数になります(自由度なので人数からマイナス1を記入します)。片側t値を求める場合は0.1を2倍にすれば良く、今回は”TINV(0.1,人数マイナス1)”となります。
まとめると以下のような数式をExcelに入力すると計算できます。
= AVERAGE() – TINV(0.2, (COUNT()-1)) * STDEV() / (COUNT()-1)
※カッコ内は個々の耐水率WR%の値を選択します
単に平均値を求めるのではなく、個々のデータのバラツキを考慮して、数値が偏っている際には最終的な耐水率が下がるという計算式になっています。この数値が50%を超えていれば、ウォータープルーフ(UV耐水性)があると判断されます。
水質の条件:ISO16217準拠
ISO16217には水浴の環境や水質の条件まで細かく決められています。美しく穏やかな環境ではなく、ある程度の不純物のある水が求められ(一般的な水道水は不適合です)、激しくない多少の水流が求められます。条件より、海水浴も想定されていると考えられます。
- 水温は28~32℃:一般的な室内温水プールの温度
- 部屋の温度は20~26℃
- 水流が0.02~0.05m/s(毎分1.2~3メートル)であること:人が入っていない際に測定可能
- 電気伝導率が500mS以上であること:不足する場合は食塩を追加
- pHを6.5~7.5にすること:基準に満たない場合はクエン酸もしくは重曹を追加
- プロジェクト毎に標準品P2を使ったチェック:ISOには2ヶ月毎と書かれています
つまり、公共のプールや風呂に浸かることなどは認められず、専用のジャグジーなどが必要になります。