「研究レビュー」とは、機能性表示食品を申請するための文献調査で、「システマティックレビュー、systematic review(SR)」とも呼ばれています。
機能性表示食品の届出における機能性は、最終製品の臨床試験、あるいは研究レビューによって評価され、その内訳は約9割が研究レビューによる届出です。科学的根拠の質の向上は、研究レビューの方法の正確さと個別研究報告(論文)の質の評価によって達成されます。
本ページでは、主に内部メンバーに向けた研究レビューの作成方法について説明していきます。外部の方がご依頼されたい際には、こちらのページをご覧ください。
機能性表示食品に向けた研究レビューの実務
機能性表示食品に関する研究レビューは消費者庁のサイトが参考になります。パンフレットに描かれている通り、研究レビューの作業自体は「文献調査」になります。
弊社の内部メンバーにおきましては、該当のDropboxを共有してもらい、担当者は食品成分別にフォルダを作成してください。Dropboxは採用文献、除外文献、作用機序参考文献なども含まれており、他の食品成分(届出)に関する情報を参考にしてください。
研究レビュー作成の流れ
1.研究レビューの依頼を受ける
・クライアント様より、届出を出したい(表示したい)食品の機能性について依頼を受けます。
2.PICOを設定する
・表示したい内容(ヘルスクレーム)を確認し、適格基準となるPICOを設定します。
P(participants)
参加者(対象者):どのような参加者の試験を適格としたか
I(inteventions)
介入:どのような介入あるいは曝露の試験を適格としたか
C(comparators)
比較対照群:何と比較した試験を適格としたか
O(outcomes)
評価項目:何をアウトカム(評価項目)とした試験を適格としたか
・機能性表示食品とは、『疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者
を含む。)及び授乳婦を除く。)を対象としているもの』であることとされています。
疾病に罹患していないが、境界域者とされるものについても、健常域者として対象者に含むもの
もあるので、消費者庁の【機能性表示食品における軽症者データの取扱いに関する調査・検討
事業報告書】で対象者を確認します。(アレルギー・尿酸・認知機能の対象者について記載さ
れています。)
例)BMIを下げる機能が目的の場合
P:BMIが高めの健康な成人(BMIが普通の人および低めの人は下げても健康の増進にはならな
いため、また、肥満域および痩せの人は健常であるかが微妙なため)
I :〇〇の摂取(機能性関与成分)
C:プラセボの摂取
O:高めのBMIの改善(Pと同様に、健康の増進につながるアウトカムのみを指定)
3.既存の届出を確認する
・消費者庁のHP内にある、『機能性表示食品の届出情報検索』を使い、同様の機能性について届
出がないか確認します。
・既存の届出がある場合、届出日の新しいものから確認し、採用文献を確認します。
①届出年度を指定する。(なるべく最新の届出を確認する)
②機能性関与成分を入力する。
③表示したい機能性を入力する。

④検索結果が表示されたら、届出日を確認し、なるべく最新のものを参考にする。
(届出が撤回になっているものは、撤回の欄に撤回日の記載があるので、届出が
撤回になっていないかも確認してください。)
⑤詳細をクリックし、基本情報のページを開く。

⑥基本情報のページをスクロースすると以下のような表示があるので、参照したい様式
を開く。

⑦様式V:機能性の科学的根拠を開き、「別紙様式(V)1~16を確認される場合はこちら→
ファイル」のファイルをクリックし、別紙様式(V)を確認する。
⑧別紙様式(V)ー4 に記載されている採用文献を確認する。(採用文献リストがあります。)
4.文献検索を行う
・採用文献を確認後、機能性成分についての文献検索を行います。
英語文献:PubMed
日本語文献:医中誌、JDream
(医中誌を用いず、JDreamなどを用いる場合は、補足として和文誌も掲載されているcochrane
を併用することが多いです。採用している文献がマイナー誌収録の場合、医中誌ではヒットし
ないこともあるので、その場合はCINIIを用いたりハンドサーチを取り入れます。)
・医中誌の使い方:医中誌Web 検索ガイド (jamas.or.jp)
・PubMedの使い方:pubmedmanual.pdf (u-tokyo.ac.jp)
・各文献検索サイトにて、検索式を立て文献を検索します。
(3.で確認した他社の届出を参考にする際は、検索式がコピー&ペーストに
ならないように注意する。)
・検索結果が0になる場合や、極端に少なくなる場合は、絞り込みはせずタイトルアブストラク
トの目視によるスクリーニングを行います(1次スクリーニング)。
・100件前後になるように絞り込む検索式を目安にします。
・検索式や文献数を適宜保存し、別紙様式Vの記載が必要な箇所に記述します。(検索日、検索式
、文献数)
例)PubMedでの検索によるタイトルアブストラクトの目視によるスクリーニング
①「Display options」をクリックし、フォーマットで「Abstract」を選択する。

②「Summary」では、タイトルや著者のみの表示ですが、「Abstract」を選択すると以下
のようにアブストラクトが表示され要約された内容を読むことができる。

5.スクリーニングを行う
・上記の手順でアブストラクトを確認し、1次スクリーニングを行う。(要約された内容を読ん
で、明らかに目的の内容ではないものを省く。)
・1次スクリーニングが終わったら本文を入手して2次スクリーニングを行います。
(本文入手に料金が発生する場合は、先生に相談します。)
6.採用文献と除外文献を決める
・本文の内容が2.で設定したPICOに合致しているか、原著論文であるか査読付き論文であるかを
確認し、採用文献と除外文献を決めます。(採用文献、除外文献ともにDropbox内のフォルダに
保存しておきます。)
・アウトカムを検証するためのアウトカム指標(アウトカムの評価方法)が、表示しようとする
内容と齟齬がないかどうか、また、広くコンセンサスの得られた指標であるかどうかを、考察
のところで述べないといけないので、そのあたりも説明可能かどうかもうっすら意識しながら
進めるのがおすすめです。
(主観的な指標によってのみ評価可能な機能性の表示も対象となりえますが、その指標は
日本人にとって妥当性が得られるか、かつ、当該分野において学術的にコンセンサスの
得られたものでなければなりません。広くコンセンサスの得られた指標であることを
参考文献などを用いて説明する必要があります。)
◎査読の有無について
「査読付き」論文とは、学会誌やその他の学術誌に審査を経て掲載に至った論文のことです。
「査読」とは、研究者が学会に論文を投稿する際に、あらかじめ同じ分野で仕事をしている
他の研究者による評価を受けることです。論文の質、ひいては会議や論文誌の質を保証する
役割を担います。査読の結果”採録”と判定された論文のみが、発表されます。
◎査読付き論文の見分け方
論文内に『received 〇〇(日月)』、『accepted △△(日月)』と書いてあれば、査読付き
と判断できます。その論文が〇〇日に提出されて、△△日に審査に通って掲載が許可された
ことを意味しています。
7.別紙様式を記入する
・届出様式は下記の消費者庁のサイトから入手できます。必要な様式を適宜ダウンロードします。
【食品関連事業者向け】機能性表示食品の届出について | 消費者庁 (caa.go.jp

・基本的には別紙様式V-4、V-5~16、Ⅶ-1を作成しますが、先方からの依頼がある場合はその
都度依頼のあった書類を作成します。