質問紙(アンケート)を活用したヒト試験(臨床試験)
私共の研究グループでは質問紙(アンケート)で天然物の機能性を評価する事例が多数あります。約15年くらい前より、食品だけでなく香りや化粧品なども質問紙で評価を実施してきました。
筆者は元々メタボリックシンドロームの研究者であったのですが、それから脳科学に興味を持ち、現在では質問紙が手放せない存在になっています。
私が脳科学に至った変遷。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) March 20, 2019
ダイエットの研究で博士
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会社でダイエット食品の提案
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食欲抑制に大きな効果
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抗鬱サプリに食欲抑制の効果
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食欲抑制と抗鬱に共通の仕組み
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会社の人間関係で鬱
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鬱に関する研究したい!
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会社を辞めて脳研究に飛び込む
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さらに鬱な環境
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なんとか独立
目次
質問紙の有用性
脳科学と聞けば、その研究方法として脳波などを想定するかと思います。また、脳に良い食品と聞けば、頭が良くなる、といった発想になるかもしれません。実際は、心に効果があることが多いです。
脳に効くものは心にも効く。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) February 19, 2019
脳神経系に効果があると聞けば、勉強や認知症に良いと思いがちですが、心に対する効果の方が即効性があります。具体的には、数ヶ月の摂取で認知機能に効果があったヤマブシタケは、4週間の摂取で鬱傾向や不安感を軽減しました。心の健康にも、食べている食材は重要です。
心に効果のある天然物を評価する際、脳波はもちろん有用ですが、その際に心理学的手法である質問紙が大活躍することも少なくありません。
心を数値化する主な研究手法。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) February 28, 2019
・脳波
・心電図解析
・生化学分析(唾液ホルモンなど)
・心理学質問紙(≒アンケート)
意外に思われるのですが、今のところ、食品や香りの効果を検出する際にアンケートが最も役に立ちます。心の数値化は、心理学の方が医学的な方法よりも得意そうな雰囲気です。
効果検証に際は、質問紙で有効性を検出できることが多く、何より解釈が明確であるので、質問紙が重宝します。
大雑把に言えば、MRI・MEG・多チャンネルの脳波やNIRSなどはヒトの理解に強く、心理学や簡便な生理計測はモノの理解に強いといった印象があります。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) March 6, 2019
何より、深い科学的な洞察がトップアスリート格闘家から頂けたのが驚きです! https://t.co/u7GPNfVz05
例えば、脳波でα波が良いようなイメージがありますが、目を閉じる頻度が高いだけでα波は増えてしまいます。つまり、α波がアップする解釈としてリラックス効果を期待しますが、眠くなったり、疲れたり、目が乾いたりした可能性もあります。
質問紙には、そのような解釈の曖昧さがなく、明確な効果を考察できることが多いです。
質問紙の種類
心理学的な質問紙は、脳計測などに比べると圧倒的な歴史があり、その種類も多種多様です。その中でも、被験者さんに負担が少なく実施可能であり、さらに、食品の効果を検出できるのは一部です。
心を数値化する主な研究手法(質問紙)。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 29, 2019
・POMS(気分尺度)
・CES-D(うつ)
・STAI(不安)
・DASS-21(ストレス)
・CFS(疲れ)
サプリメントや香りの評価(効果があるかどうか)に利用しています。天然物の効果を上手く検出するのは、意外と職人技なのです。
筆者が最も昔から利用していて、効果の検出を得意とする質問紙の1つに特にPOMSがあります。Mood(気分)を数値化する方法で、 「緊張」「抑うつ」「怒り」「活気」「疲労」「混乱」の6つの 尺度 を評価できます。
心の状態を数値化する方法の1つにPOMS(Profile of Mood States)という質問紙があります。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 27, 2019
食品や香りの効果を検出する際に最も頼りになります。
心療内科などでも可能なようですが、当研究グループのモニターをすることでも、POMSを受けて改善効果を確認できます。https://t.co/qi485EePFS
質問紙では、心理的な事柄の数値化に加えて、痛みなどの主観や便や肌など物質の状態を数値化することにも利用されています。
質問紙で評価できる意外(?)な身体の症状の一例。健康食品の効果検証で利用しています。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) September 1, 2019
・ブリストルスケール(便秘)
・VAS(痛み感覚全般)
・PSQI(睡眠)
・IIEF(ED)
質問紙(アンケート)での効果検証は、昔は胡散臭く思われていましたが、今では標準的な方法と認められています。
アレルギーの状態や風邪症状の数値化にも利用されています。
レンコンの抗アレルギーについての研究について、発端は農家の方々が花粉症対策に、レンコンの皮を鼻に塗っていたことに始まると聞きました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) July 24, 2019
噂や民間伝承の時点では胡散臭いこともありますが、しっかりとした科学的事実が隠されていることも多くありました。
レンコンも今後の研究に期待です。
質問紙で食品の効果を数値化する試みは、約15年前では偽科学のように否定されることもありました。現在は、機能性表示食品で多く利用されており、標準的な手法として認められています。
機能性表示食品の制度が始まって、食品に表示できるようになった機能性の一例。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) July 18, 2019
・膝関連
・認知機能
・不安感
・疲労感
・睡眠
「自分が定年するまでに心の健康や認知症改善を表示できるようになるハズ!」と予言していたことが、20年以上早く実現しました。改めて、画期的な制度だと感じます。
上記の認知機能以外のすべてが、質問紙によって新しく表示の受理をされた機能性になります。特定保健用食品の頃に比べて新しく認められた機能性について、質問紙の役割は大きいです。
質問紙評価の実績
恐らく100に近いヒト試験(臨床試験)を当研究グループで実施してきました。その中の約3~4割程度が質問紙の評価を中心としています。そのいくつかを紹介します。
ヒアルロン酸の膝痛改善効果
質問紙評価の中で最も回数が多いのが、膝痛に関する試験で10回以上の臨書試験を経験しております。2006年から始まり、5つ以上の食品成分や医学部外品を評価してきました。
サプリは『実感が重要』な事例。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) February 12, 2019
十数年前ヒアルロン酸サプリは絶対に効かないとされてて、当時のWikiに「偽科学」として紹介されていました。私も効かないハズとお伝えして効果検証を引き受けました。ですが、5回以上も膝痛の改善効果が再現されました。
科学の方が遅れていることも多いです。
その研究紹介を動画にもしました。VAS(Visual Analog Scale: 視覚的アナログ尺度)を具体的に説明しています。
ヒアルロン酸の摂取が膝痛を改善することは、今では広く知られていることですが、私共が研究を始めた約10年前は、偽科学のように語られました。私も半信半疑であったのですが、有効性を何度も確認することができました。その研究は心理学をベースとして評価をしました。https://t.co/0y0OHyW1IX
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) September 9, 2019
睡眠の改善効果
最近の最も代表的な事例が、機能性表示を取得した評価手法であるPSQIです。以下の研究論文を元にサフランは機能性表示食品として受理されました。
サフランの効果に関する研究論文。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) April 6, 2019
“Sleep Enhancement by Saffron Extract in Randomized Control Trial”
(サフラン抽出物は睡眠を改善する)
残念ながらオンラインで見ることはできませんが、機能性表示食品であるので、消費者庁のページより概要を確認できます。https://t.co/1EB7NxF3sj
以下のように、具体的な研究内容を動画にしています。別のページにてサフランに関する研究を詳細に紹介しています。
サフランの研究は日本香辛料研究会で発表しました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) April 7, 2019
その一部を動画にしてみました。
睡眠の代表的な評価方法(ピッツバーグ睡眠質問票:PSQI)を実施したところ、予想された通りに改善が見られました。睡眠の質が悪い人ほど、その効果が明確になることも確認されました。https://t.co/xkvuEOmDKx
以下の研究では、いびきの強度を騒音計で数値化したのですが、チャンピオンデータ(最もクリアなデータ)は、PSQIによる睡眠の質を改善することでした。
いびきの改善効果に関する論文が受理されました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 15, 2019
「リンゴ酸およびマグネシウム含有サプリメントの摂取がいびきを自覚する健常者の睡眠の質に与える有効性」(新薬と臨牀)
絶対に効くはずがない!と念を押して受けた研究ですが、見事に効果がありました。残りがなくなるまで愛用していました。
気分(不安や落ち込みなど)の改善効果
サフランに関しては、眠気の改善効果以外にも、不安や気分の落ち込みを改善するという機能性表示が取得できています。これは、POMSの評価項目を素直に機能性表示することに成功しています。「困惑感を軽減」という食品を求める方々がいらっしゃるかどうかは別にして、質問紙が機能性表示に直結するという良い例です。
先日紹介したサフランについて、さらにもう1つ、新たな機能性表示が認められました!
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) April 21, 2019
「眠気を軽減」させ「意欲を維持」する
だけでなく
「不安感、気分の落ち込み、困惑感を軽減」
と表示できるようになりました。
調査や研究が報われた気がします。https://t.co/4OGsuyu9bi
POMSが食品の有効性を評価することは、今では一般的ですが、私共の研究チームでは、約10年前に先駆けて事例を発表していました。認知機能の改善効果で知られるヤマブシタケは、脳に対する良い影響があり、不安や落ち込みを改善する効果も見られました。
ヤマブシタケの研究で、私共が初めて発表した研究。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) March 22, 2019
”Reduction of depression and anxiety by 4 weeks Hericium erinaceus intake.”
(ヤマブシタケの摂取は鬱や不安を減らす)
約10年前の研究ですが、当時は(今も?)記憶や学習よりもメンタルヘルスに興味がありました。https://t.co/fkdMi5xjg8
疲労感の改善効果
プラセンタの効果を血液検査や肌質測定なども使って評価したのですが、疲労感の改善効果がチャンピオンデータとなりました。
プラセンタには様々な効果が知られていますが、科学的に検証されている例は、ごく僅かです。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 6, 2019
私共も少しずつ明らかにしており、論文も受理されました。
「プラセンタエキス原末含有サプリメントによる日本人成人女性の不定愁訴改善作用」(新薬と臨牀)
主に、疲労感を改善する結果が得られました。
その研究の詳細は動画でも紹介しています。
プラセンタの効果の一部を検出することができて、それを論文にすることができました。学術論文は分かりにくいので、動画にもしてみました。身体的な疲労感を改善する効果が、疲労の指標として使われている質問紙で数値化することができました。https://t.co/CY1yvmRfLC
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 12, 2019
風邪症状の改善効果
医薬品や医薬部外品は、薬局やドラッグストアで購入し、信頼性の高いと盲信してしまいますが、そのエビデンスは健康食品未満であることも多いです。医薬品で得られているエビデンス以上の効果を、のど飴で検出することができました。
昨年のこの時期に実施した、風邪症状の予防に関する研究結果をUHA味覚糖さんのサイトで発見!サイトの一番下の方に、データと私の名前も掲載されていました。サンプルが多く余ったお陰で、喉の調子が悪い時などに助かっています。 pic.twitter.com/YIGawWtCVA
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) January 15, 2019