心拍変動解析・脳波・パッチクランプ法

脳神経活動を評価する方法は、MRI等の高度な装置もありますが、費用の面からも簡便に測定することが難しいです。このページでは、食品や香り等の機能性を評価しやすい心拍変動解析、 脳波、パッチクランプ法について紹介します。

心拍変動解析

心拍変動解析は、心拍変動パワースペクトル解析、R-R間隔変動解析などと呼ばれています。「変動」と言葉の通り、 周期的に変動している心拍一泊毎の間隔を数値化します。

私たちの心拍数は、呼吸や血液を流れる物質などによって周期的に変化をしています。心拍変動解析では、その周期的な変化の振幅や周波数を数値化します。その数値化された指標は、自律神経活動(交感神経活動、副交感神経活動)を反映しています。

以下の動画で詳細に説明しています。

心拍変動解析は、特に香りの効果を検出する際には最も有用な物理的計測方法の1つです。特に、副交感神経活動の向上(≒リラックス効果)を検証する際などに利用されています。

脳波

脳波とは、脳の神経細胞の電気的な活動の総和を頭皮から電極で計測する方法です。人を傷つけることなく非侵襲的に測定可能であり、装置や消耗品の費用が比較的安価であるなどの利点があります。脳は、人の心身の状況を常にコントロール・モニタしているので、脳波でその状況を確認することができます。

脳波の記録

脳波は、ハンスベルガー(Hans Berger)によって人で初めて1929年に報告されました。また、ジャスパー(Jasper)により計測方法が1958年に標準化され(国際10-20法)、この方法は半世紀を超えた今でも使われています。上の写真は、ジャスパーからハンスベルガーに送られたクリスマスカードになります。

脳波の測定(国際10-20法)では、上記のように電極が頭皮に貼り付けられます。Fがフロント(前)、Cがセンター(中心)などの意味合いがあります。これ以上細かく測定する方法もありますが、天然物の効果を評価する場合は、2~6点に電極を貼り付けて計測する方法が一般的です。

脳波の解釈

上の画像が脳波の一例になります。良く耳にするのがα(アルファ)波ですが、それよりも大きな波であるδ(デルタ)波やθ(シータ)波、α波よりも細かいβ(ベータ)波など、波の振幅の周期により分類されています。

α波が増える(上下の振幅が大きくなる)の解釈として、リラックスするなどが言われていま。しかしながら、目を閉じることによってもα波が増えるので、その数値だけを鵜呑みにすることはできません。リラックス効果などは、心理学的質問紙や生理学的指標(唾液のIgAやコルチゾール等)と総合して判断することをお勧めします。

脳波でα波のような周期的な変化に加えて重要な指標が事象関連電位です。名前の通り、ある事象(画像を見るなどの刺激や思考など)に関連して生じる電位の変化です。

上記は、中島らにより2008年に発表された論文より引用しています。「N170」というのは、「N」がNegative(脳波の記録は上方向がマイナスになっています)の略で、「170」は事象が起こった後に生じるミリ秒(170ミリ秒なので、0.17秒後)という意味になります。グラフでは、人の顔を見ることによって(上記の赤線)振幅が大きくなっています。この研究より、人は顔を見分けることのスペシャリストであると解釈することができます。

パッチクランプ法

パッチクランプ法とは、生きている 1つ の細胞、さらにチャネルタンパク質の分子1つに流れる電流をリアルタイムで計測する方法です。ドイツの研究者エルヴィン・ネーアー(Erwin Neher)とベルト・ザクマン (Bert Sakmann)により開発され、1991年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

※神経細胞の電流については、神経科学のカテゴリー、第1~2回や各種感覚をご参照下さい

イオンチャネルの種類

イオンチャネルには、いくつかの種類があります。細胞膜の電位によって開閉されるイオンチャネル(下図A)、物質が結合することにより制御されるイオンチャネル(下図B)、また物理的な力によって開閉されるイオンチャネル(下図C)などがあります。それぞれ、電位依存性チャネル(A)、リガンド作動性チャネル(B)、機械受容チャネル(C)と呼ばれています。

パッチクランプ法の計測と応用

細胞やチャネルタンパク質から得られる電流の計測は、以下のような装置が使われています。顕微鏡で観察しながら目的とする細胞を確認し、その電流をA/Dコンバーター(アナログ電流をデジタル信号に変換する装置)を経由してパソコンに記録します。

このパッチクランプ法は、神経に関する基礎研究で利用されているだけでなく、医薬品の開発などにも利用されています。創薬のターゲットとなるタンパク質の約20%がイオンチャネルであり、自動的に多くの物質をスクリーニングするシステムも開発され、効率化が図られています。