研究論文を依頼される際にご留意いただきたい事項

研究論文に関する一般論

ご理解頂きたいとことを以下、列挙させて頂きました。

1.論文は受理されない場合がある
2.筆頭著者の倫理観や解釈が優先される
3.著者には関係した方々のみ
4.英語と日本語で同じ(似た)内容では出せない
5.一度受理されると修正が極めて困難

誤解として頻度の多いと思われる順番に記載しました。

研究論文は著者の創作品

 個別の説明は省略させて頂きたいと思いが、最も困るのは「2」についての誤解です。

 メーカーの方がなるべく良い表現を求める気持ちは分かりますが、サイエンスとして妥当な結論として難しいことがあります。基本的には、著者(研究者)の倫理観や解釈が優先となり、指導者でもその介入が難しいです。

 また、機能性表示を目指した論文の場合、あまりに規定やフォーマットに沿い過ぎると、事務的な文章のように無味乾燥な論文になってしまいます。文学作品や文学賞のようにご理解頂けると分かりやすいかと思いました。

研究者だけ知っている(?)研究論文の常識

 一般の方々にはあまり知り得ない常識であると思いますが、研究者にとっては大問題であることが、著者の順番などです。また誤解の「3」に該当することでもありますが、実際に研究に関わった方々だけが著者になることができます。全く研究に関与していない経営者や重役の方が著者に入ることは倫理的に違反します。

 論文の著者に関することは明確な法律や規定がある訳ではなく「オーサーシップ」と呼ばれる倫理観や国際的なガイドラインがあります。つまり、基本的には、執筆している研究者の価値観や経験に委ねられます。

著者の順番は研究者の死活問題

 これは、もしかしたら雰囲気でも分かるかもしれませんが、著者の最後に責任者(教授など)の名前があることが多いです。ラストオーサー(last author)と呼ばれています。

 そうなると、一番目の者が立場が低いかというと、逆に、論文に最も貢献した人が書かれる場合が多いです。筆頭著者、ファーストオーサー(first author)と呼ばれています。

 研究員や教員として採用される際に2番目、3番目くらいまで考慮してもらえることが多く(それぞれ、セカンドオーサー、サードオーサーと呼ばれます)、この順番に神経質である研究者も少なくありません。こういったことから、大学との共同研究で企業の方の名前が入る際、最後を避けつつ、4番目以降になっていることが多いことと思います。

全責任を負う訳ではない責任著者

 コレスポンディングオーサー(corresponding author)、略して「コレスポ」と呼ばれることもあります。日本語論文の場合は、責任著者と書かれていますが、直訳すると『対応する連絡担当者』くらいになります。例えばノーベル賞の受賞者はコレスポであることが一般的で日本語の責任著者という言葉も納得です。

 これは、前述の著者の順番とは関係なく、複数名が責任著者になることも可能です。一般的には、ファーストオーサーもしくはラストオーサーの方が責任著者になることが多いです。研究論文に関する責任は著者全員が負うものであり、一人に責任を負わせる、一人だけの手柄になるという訳ではありません。

著作権は出版元になることが多い

 多くの研究論文の投稿規定に、著作権の帰属は出版元に帰属することが明記されています。例外もありますが、臨床試験に関するような医学、生命科学などの分野については、ほぼ100%該当します。執筆費用をご負担頂いた企業には理不尽かもしれませんが、その研究成果が人類の財産となり、歴史に刻まれるとご理解頂ければ幸いです。