プラセボとは?

 プラセボとは、有効成分を含まない偽薬(ぎやく)です。プラセボは、有効成分の代わりにデンプンなどの身体に影響を与えないものを利用して作った偽の薬です。

 一般的に、臨床試験の際には、調査対象となる有効成分を含んだ試験物と、試験物と味や外観に見分けがつかないように作られた有効成分以外の材料はほぼ同一のプラセボを用意し、被験者が試験物とプラセボのどちらを服用しているのかわからないように行います

なぜプラセボを使うのか?

 では、なぜこのような手順を踏むのでしょうか?

 それは、『プラセボ効果(プラシーボ効果)』と呼ばれる、心理的影響を排除するためです。人は効き目の全くないとされる物でも、本物の薬だと思い込ませて服用すると、思い込んだ効果が表れるということがあります。この効果は、心理的な状態や痛みなどの感覚的な状態にとどまらず、測定可能な効果としてあらわれることもあります。これは、薬そのものの効果ではなく、薬を投与された(または治療された)安心感や、医師への信頼感などによる心理作用によるものです。実際に、頭痛や精神疾患などに対して病院でも処方される場合もあります。

 臨床試験では、試験物そのものの効果を測るために、できるだけ結果に影響を与える要因を排除する方法を用います。プラセボを用いることにより、心理効果という要因を排除します。

二重盲検(ダブルブラインド)とは?

 二重盲検試験(ダブルブラインドテスト)では、試験の実施者と被験者の両方に試験薬とプラセボのどちらが割り付けられているか告知がされません。一重盲検試験では、被験者にのみ、試験薬とプラセボのどちらが割り付けられているか告知がされません(実施者はどちらが本物か知っています)。

 試験物とプラセボに味や外観上に違いがあると、被験者がどちらを服用しているか推測できてしまうため、盲検性の評価が下がってしまいます。また、有効成分以外の影響を排除するため、プラセボの成分については、試験物と有効成分以外は同一であり、有効成分をデンプン等に置き換えたものであることが望ましいです。

プラセボの要件

 完全に試験品と一致することは困難な場合もありますが、可能な限り心理的な効果を排除することが求められます。

プラセボの要件としては、主に以下が挙げられます。
有効成分が含まれていない
外見が概ね同等
味や香りが概ね同等
三大栄養素が概ね同等

有効成分を含まない

 プラセボとして当然の要件ですが、意図せずに有効成分が入ることもしばしばあります

 例えば、プラセボに乳糖(ラクトース)を入れることは多いですが、多くの日本人は成人になるとラクトース分解酵素活性を失います。そのため、便秘の改善やそれに伴うメンタルヘルスの向上なども懸念されます。

 プラセボに有効成分が含まれる場合、製品に添加した物質の効果が検出しにくくなります。製品の効果を過信しないということも重要です。

外見が概ね同等

 プラセボに入ってしまう有効成分として、最も注意する点は色素です。天然色素はポリフェノール類やカロテノイドなど有効性を持つ物質を含むことがあります。 食品添加物として認められている10種の色素を利用することをお勧めします。

 慎重なご担当の方で「白さ」や「黒さ」の具合を気にされる場合もありますが、心理的な効果が同等と思われる場合は、あまり気にする必要がありません。並べて全く同等でなくても大丈夫です。

 ごく稀に、サプリメントの外観は同じであっても、製品のパッケージに入っていることがあります。質素なパッケージの際は、あまりプラセボ効果は検出されませんでしたが、派手なパッケージでは、かなりプラセボにも効果がありました。基本的には、無地のアルミパウチなどをお勧めします。

味や香りが概ね同等

 サプリメントの場合は、あまり考慮する必要はありませんが、一般食品の場合、プラセボ製造の難易度が極端に高まります。ケースバイケースですが、複数名の管理栄養士などの有資格者に依頼や相談をしつつ作成しています。

 一般食品の場合、そのままで臨床試験の実施をするのではなく、抽出物をサプリメントとすることで解決することもあります。

 揮発成分(香り)の場合は、その濃度を少なくすることなどでプラセボ効果を排除すること等、最も苦労します。

三大栄養素が概ね同等

 三大栄養素とは、炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質の総称です。化粧品の場合は、考慮する必要はありません。

有効性の懸念される脂質

 中鎖脂肪酸、ココナッツオイル、DHA、EPA、魚油等は脳機能(メンタルヘルス向上や認知機能改善)やメタボリックシンドロームに効果の可能性があります。日常で摂取量の多い サラダ油(サフラワー油、コーン油等)をお勧めします。

有効性の懸念されるタンパク質

 魚由来、乳由来、大豆由来、コラーゲンについては、それぞれ様々な研究が報告されています。乾燥卵白が入手しやすく有効性がほとんど懸念されない素材です。

有効性の懸念される糖質

 難消化性のデキストリンや海藻由来の多糖類は、整腸作用などが懸念されます。デンプン(デキストリン)やセルロースなどがお勧めです。

 甘味料はショ糖、代替甘味料はスクラロース、アセスルファムをお勧めします。ブドウ糖やペプチド系代替甘味料(アスパルテームなど)には、脳機能などへの影響も考えられます。

最終確認(重要)

 臨床試験を実施する際には、プラセボの製造に最も時間がかかってしまうことが少なくありません。臨床試験に備えてプラセボを常備しておくことや、迅速な検討や依頼をお勧めします

 以上の要件を踏まえてプラセボを作成すると、プラセボ効果を最小限にできます。臨床試験を実施する前には、専門家に確認することを強くお勧めします。 研究論文にする際はその情報が必要になりますので、臨床試験を依頼する際には処方のご提示をお願いします