クロスオーバー試験(クロスオーバー法)とヒト試験の研究計画

クロスオーバー試験の実験デザイン

一般的に実施される、2群2期のクロスオーバー試験(2×2デザインやAB/BAデザインとも呼ばれる)では、

①:まず被験者をランダムに2群に分けます。被験者をランダムに割り付けることにより、性別、年齢や健康状態などの被験者背景に差をなくします。

②:1群は第I期に介入Aを受け、第II期に介入Bを受けます(例:先に試験品を摂取、その後プラセボを摂取)。2群は第I期に介入Bを、第II期に介入Aを受けます。

ウォッシュアウト期間

第I期と第II期の間には、休薬期間やウォッシュアウト期間(washout period)と呼ばれる試験を行わない期間を設け、第I期の介入の影響(持ち越し効果/carryover effect)をなくします。

ウォッシュアウト期間の設定については、先行の研究や予備実験を参考に、介入の特徴をよく理解して設定します。一般的には、単回摂取の場合は約1~2週間後の同じ曜日かつ同じ時間に測定します。長期摂取試験の場合、摂取期間以上、可能であれば2倍程度設けることが望ましいです。

このように、クロスオーバー試験では、被験者全員が、最終的に同じ期間、同じ処理、同じ回数の介入を受けることになります。

持ち越し効果

1群と2群の被験者背景に差がないようにすること&持ち越し効果がないようにすることが重要になってきます。解析を行う際は、被験者背景に差がないことの確認はもちろんですが、持ち越し効果が有意でないことの確認も必要です。持ち越し効果を含めた分散分析を行い、持ち越し効果が無視できることを確認したのち、介入と時期の交互作用を見ましょう。

※:統計解析の参考:『科学的に効果があるとは?

この交互作用が無視できるなら、介入効果と時期効果の2つの項を含む分散分析モデルで検定します。反復測定分散分析(repeated measures ANOVA)では、上記で述べたそれぞれの効果を一度に検定できます。あるいはランダム効果を含んだ混合モデルを用いて検定します。

参考文献

  1. 折笠 秀樹. クロスオーバー試験の計画および解析. Jpn Pharmacol Ther. 2016. 44(9):1261-1276.
  2. 折笠 秀樹. 論文作成における統計解析に関する留意点. Jpn Pharmacol Ther. 2015. 43(12)1773-1776.
  3. 佐藤 泰憲、高橋 翔、長島 健悟. 臨床試験の計画:試験デザインとデータ解析.日小ア誌. 29:214-221.