クロスオーバー試験(クロスオーバー法)

ここでは、ヒト試験(臨床試験)でよく実施されるクロスオーバー試験(cross-over trial)について、健康食品や化粧品の開発に利用することを主な目的として解説しています。

クロスオーバー試験(クロスオーバー法)は、食後血糖抑制試験や香りの効果検証等で使われることの多い研究デザインです。

クロスオーバ試験(クロスオーバー法)のメリット

クロスオーバー試験のデザインでは、全ての被験者に介入と対照を経験してもらう(例:プラセボと試験品の双方を摂取する)ことになります。そのため、以下のようなメリットがあります。

・被験者の数が並行比較試験(例:被験者を2つのグループに分けてプラセボと試験品を試用)に比べて少なく済む

・被験者背景が予期せず介入群(試験品)と対照群(プラセボ等)で異なるという状況をなくすことができる

・通常の並行比較試験などに比べデータのばらつきを減らすことができる

以上のような特徴があるため、効果の判定が正確になりやすいという大きな利点があります。

クロスオーバー試験のデメリット

しかし、各被験者が介入と対照を両方経験する為、試験期間が倍以上になるというデメリットがあります。比較的長期にわたって試験を行うため、以下のように時間の影響を受ける要因については注意が必要です。

・時間の経過とともに完治してしまう疾患

・症状が安定していない(良くなったり悪くなったりする)症状

・季節の影響を受けやすい症状

・成長に関する項目など

上記のような場合、ランダムに振り分けられた被験者の背景が等しいという前提に当てはまらなくなるので、クロスオーバー試験には向きません。

何より、最初の介入により不可逆的な効果(持ち越し効果)が出てしまうような場合も適用できません。そのため、介入の効果が速やかに表れ、その効果が介入終了後すぐに消失する場合には向いていますが、そうでない場合は試験期間が長期化するため、コストや脱落者の増加などの観点からも並行試験のほうが良いでしょう。

クロスオーバー試験の実験デザイン

一般的に実施される、2群2期のクロスオーバー試験(2×2デザインやAB/BAデザインとも呼ばれる)では、

①:まず被験者をランダムに2群に分けます。被験者をランダムに割り付けることにより、性別、年齢や健康状態などの被験者背景に差をなくします。

②:1群は第I期に介入Aを受け、第II期に介入Bを受けます(例:先に試験品を摂取、その後プラセボを摂取)。2群は第I期に介入Bを、第II期に介入Aを受けます。

ウォッシュアウト期間

第I期と第II期の間には、休薬期間やウォッシュアウト期間(washout period)と呼ばれる試験を行わない期間を設け、第I期の介入の影響(持ち越し効果/carryover effect)をなくします。

ウォッシュアウト期間の設定については、先行の研究や予備実験を参考に、介入の特徴をよく理解して設定します。一般的には、単回摂取の場合は約1~2週間後の同じ曜日かつ同じ時間に測定します。長期摂取試験の場合、摂取期間以上、可能であれば2倍程度設けることが望ましいです。

このように、クロスオーバー試験では、被験者全員が、最終的に同じ期間、同じ処理、同じ回数の介入を受けることになります。

持ち越し効果

1群と2群の被験者背景に差がないようにすること&持ち越し効果がないようにすることが重要になってきます。解析を行う際は、被験者背景に差がないことの確認はもちろんですが、持ち越し効果が有意でないことの確認も必要です。持ち越し効果を含めた分散分析を行い、持ち越し効果が無視できることを確認したのち、介入と時期の交互作用を見ましょう。

※:統計解析の参考:『科学的に効果があるとは?

この交互作用が無視できるなら、介入効果と時期効果の2つの項を含む分散分析モデルで検定します。反復測定分散分析(repeated measures ANOVA)では、上記で述べたそれぞれの効果を一度に検定できます。あるいはランダム効果を含んだ混合モデルを用いて検定します。

参考文献

  1. 折笠 秀樹. クロスオーバー試験の計画および解析. Jpn Pharmacol Ther. 2016. 44(9):1261-1276.
  2. 折笠 秀樹. 論文作成における統計解析に関する留意点. Jpn Pharmacol Ther. 2015. 43(12)1773-1776.
  3. 佐藤 泰憲、高橋 翔、長島 健悟. 臨床試験の計画:試験デザインとデータ解析.日小ア誌. 29:214-221.