当研究グループでは、食品だけでなく、香り(アロマテラピー)に関する研究も数多く実施しています。大手企業からの依頼や国家プロジェクトとして実施することが多く、リラクゼーションを中心とした脳神経系に対する機能を求めらることが特徴です。アロマテラピーなどで多くの方が経験している通り、リラクゼーションなどの効果(リラックス効果、鎮静効果)が証明されました。
効果のあった香り&アロマ。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) February 25, 2019
・モミの精油
・天然杉
・ローリエ
・ラベンダー
・ベチバー
・ジャスミンティー
食品の研究者ですが、肺から摂取する天然物と考えてアロマに関する研究もしています。実際、香りを感じないくらいに薄くすると効果を検出できることも多いです。https://t.co/CzqNjcQ1MI
以下の動画をご覧を頂けますと、香りの研究の全体がご理解頂けるかと思います。
香り(アロマテラピー)の研究概要
香り(アロマテラピー)の研究の難しさは感覚による効果と吸入による効果が組み合わされているということです。ミリグラム単位で効果のある食品成分は多いですが、香り物質は口から摂取する食品成分と同じくらいに体内に吸収されています。
香りは、食品と同じように物質を肺から摂取していると考えています。その根拠としては、
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) March 1, 2019
肺の内側の表面積はテニスコートの半面くらいあると知ったこと、
製薬会社時代の新人研修で、経肺吸収薬の開発を聞いたこと
感じることの出来ない香りの方が上手く効果が検出できたこと
などがあります。
香りとプラセボ効果
香りは、そもそも感じることができるので、プラセボ効果を排除することが困難です。多くのアロマテラピーに関してプラセボと比較している研究は稀であり、その効果の真偽は明らかではありません。
香り研究の難しさは、好き嫌いだけでなくイメージも大きく影響することです。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) March 3, 2019
例えば、同じ香りでも、良い情報を提供されると良い反応が出て、悪い情報を提供されると嫌悪反応が出るという研究があります。
プラセボ効果(イメージや思い込みによる作用)を排除することが香り研究の大きな課題です。
プラセボ効果を排除するためには、かなり大掛かりな仕掛けをすることも少なくありません。例えば、木の香りの効果を検証するために、外観や内装をそっくりにした小屋で実験したこともあります。
スギ花粉真っ盛りの時期に恐縮ですが、杉の香りに関する研究のご紹介。林野庁プロジェクトの採択を受け、5年以上研究を続けています。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) March 18, 2019
大きな特徴は、内外装ともにそっくりな環境を整えたこと。プラセボ(効果のない偽物)の概念を香りの研究に導入したことです。様々な効果の検出に成功しました。 pic.twitter.com/IzPExGQXQc
香りの効果評価方法
香りの効果はアロマテラピーに連想される通りリラクゼーションを求められることが多く、一般的なヒト試験とは多少異なった手法を利用することが多いです。脳波や心電図解析による自律神経活動の数値化は、主に香りの研究で利用されています。
心を数値化する主な研究手法。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) February 28, 2019
・脳波
・心電図解析
・生化学分析(唾液ホルモンなど)
・心理学質問紙(≒アンケート)
意外に思われるのですが、今のところ、食品や香りの効果を検出する際にアンケートが最も役に立ちます。心の数値化は、心理学の方が医学的な方法よりも得意そうな雰囲気です。
心に対する効果が中心となるので、ヒト試験(臨床試験)と同様に、質問紙による評価手法が活躍します。脳波や心電図解析以上に検出感度が高いことも多くありました。
心を数値化する主な研究手法(質問紙)。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 29, 2019
・POMS(気分尺度)
・CES-D(うつ)
・STAI(不安)
・DASS-21(ストレス)
・CFS(疲れ)
サプリメントや香りの評価(効果があるかどうか)に利用しています。天然物の効果を上手く検出するのは、意外と職人技なのです。
香りの研究事例
約20年前より香りの研究を実施してきました。その際に気付いた重要な事実としては、嗜好性(香りへの好き嫌い)が大きく効果に関わることです。そのため、香りを感じなくなくなるほど薄くすると、物質の効果が明確に評価することも、しばしばありました。
一番始めに関わった香りに関する研究。https://t.co/ZnbkoDQZav
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) March 2, 2019
ジャスミンティーの香りによってリラックス効果があったのですが、香りが強い時には好き嫌いで反応が違い、香りが感じられないほど薄くすると、好き嫌いにかかわらず効果が検出できました。
アロマ(香り)の効果は物質の力+嗜好性。
現在の研究グループでは、約10年前から香りの研究を実施してきました。ベチバーは、産学連携で実施した香り研究として、初めての研究になります。
香りの研究を九州大学の清水邦義先生と始めてから十数年になりますが、2007年頃から始めていたベチバーに関する研究が新聞で紹介されていました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 18, 2019
高級な香水や化粧品に採用されているベチバーですが、廃棄される部分にも様々な効果があり、有効利用されています。https://t.co/kwaQcpOjaF
2018年に実施した主な研究として、イグサに関する研究があります。これは、研究室の一部に畳を敷き、その畳を効果のないもの (イグサではない紙製の) に敷き換えて、その効果を検証するという大変な苦労がありました。
私共の実施した研究が新聞に掲載されました。イグサのリラックス効果を検証した研究です。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) October 4, 2019
畳の部屋に入ると癒されることは、多くの方が経験していることかと思いますが、それを検証するのは非常に大変な研究になります。
スタッフの苦労も報われたことも嬉しいです。https://t.co/8RmmTRdx4g
杉の香りに関する研究
香りの研究で最も多くの時間や労力をかけている研究は、杉の香りに関する研究です。論文化が滞っており、睡眠に関する効果については、やっと社会に出すことができました。
スギの香り分析と良く眠れるという効果に関する研究論文が受理されました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 12, 2019
『スギの無垢材を内装に用いた室内空間が人の睡眠に及ぼす影響』(木材工業74巻7号)
この研究の始まりは5年以上前に遡り、林野庁からの助成をいただき、企業のご協力や多くの研究者の努力により形になりました。
2019年現在、徳島杉の効果検証を実施しています。杉の効果は既に実証されているので、加工方法の違いによる効果を検証する予定です。
約10年前から杉の香りに関する研究を依頼されているのですが、珍しく九州以外の自治体からの受託がありました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 20, 2019
スギの香りには癒しの効果があるのですが、どのような加工方法が良いかといった検討です。
期間や予算が限られるので、早くて安価に実施できる心理学的な手法で検証する予定です。
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