霊芝は、マンネンタケやサルノコシカケなどとも呼ばれているいるキノコで、ガンに対する効果などが有名です。私たちの最近の研究は、機能性表示取得を目的とした研究が多いですが、2021年現在、機能性表示を取得した製品は見当たりません。私たちの文献調査では、メタボリックシンドローム関連に関して、機能性表示食品として受理されるレベルの臨床試験があることも分かりました。
この霊芝にはガノデリン酸(Ganoderic acid)という有効成分を含んでいて、私たちの研究で抗インフルエンザ作用や抗ガン作用のメカニズムを解明しました。まずは、世界の霊芝研究からご紹介したいと思います。
目次
霊芝(ガノデリン酸)の研究レビュー
霊芝は古くから生薬として使われているキノコで、海外では薬として扱われている国もあります。人工合成の医薬品とはことなり、天然の多くの成分が含まれており、その効果も様々です。既存研究をレビュー(文献調査)してみると、多くのエビデンス(研究論文)が見つかります。
霊芝(ガノデリン酸)のガン細胞に対する効果
霊芝の研究は、ガンに対する効果が最も多いのではと思います。文献調査をすると、様々な癌腫に対して、様々なメカニズムで効果がありました。
霊芝に含まれる成分の文献を調査しました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 18, 2019
アポトーシス(細胞死)を誘導して腫瘍細胞を抑制する研究を中心として、多くの研究論文が発表されていました。
霊芝の成分は数多く、また、腫瘍細胞の種類も多いので、全容の解明には長い年月が必要になると思いますが、幅広い効果が期待できそうです。 pic.twitter.com/1GW1nEC758
メタボリックシンドロームに対する効果
ガンだけでなく、メタボシックシンドロームに対する研究も多くありました。臨床試験も多く実施されていて、機能性表示を取得できるほど、多くの研究成果がありました。
今の制度では「ガンの予防に」といった表示はできませんが、霊芝には、私共の調査では以下のような機能性表示ができる可能性がありました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) July 6, 2019
・血糖値が高めの方に
・血圧が高めの方に
・血中脂質が高めの方に
・頻繁な尿意を抑える
まだ届出をされている製品がないので、今後に期待です。
霊芝の有効成分:ガノデリン酸とβグルカン
霊芝の効果を説明する最も有力な物質はガノデリン酸(Ganoderic acid)です。細かい化学構造の違いでガノデリン酸A、ガノデリン酸B…と命名される多くの類似物質があり、それらの混合物になります。
ガノデリン酸とは?
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) May 4, 2019
霊芝(Ganoderma)に特有の成分。身近な物質としては、コレステロールやステロイドなどに形が近いく、性ホルモンなども多少近い仲間。
ガノデリン酸特有の効果があり、抗腫瘍作用や抗インフルエンザ作用については、その「形」が重要であることが、私共の研究で分かりました。
ガンとメタボリックシンドローム双方の効果を説明する物質として、βグルカンも多く含まれています。βグルカンは、ある程度知名度の高い成分ですが、これも、食品素材によって化学構造が異なります。
βグルカンとは?
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) May 5, 2019
まずグルカンとは、ブドウ糖が多数結合した物質。パンや米に含まれるデンプンはαグルカンです。αとβの違いは、ブドウ糖が結合する形の違いのみ。βグルカンは、デンプンの仲間と言えます。
何の影響もない物質に聞こえますが、まだ未解明なことが多く、今後の研究が期待されます。
当研究グループの霊芝(ガノデリン酸)研究
当研究グループでは、約10年前より霊芝に関する様々な研究を実施しています。
霊芝の研究は、当グループの研究者が企業の方とお酒を飲んでいる時に、効果があるという噂を聞いてから始まったようです。以下の動画では、その噂通りに前立腺肥大の症状に効果があることが実証され、ガン細胞を抑制することを説明しています。
霊芝(ガノデリン酸)が作用するメカニズム
私たちの研究グループで実施した研究のうち、抗ガン作用に関する研究がScientic Reportsという世界的に知られる科学誌に2012年に掲載されました。
霊芝成分の抗腫瘍メカニズムに関する論文。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) April 28, 2019
“Target proteins of ganoderic acid DM provides clues to various pharmacological mechanisms.”
(カノデリン酸の標的タンパク質は様々な薬理メカニズムの手掛かりとなる)
抗がん剤と同じ仕組みでガン細胞の増殖を抑えていることが解明されました。
その3年後の2015年にもScientic Reportsに掲載される研究が発表されました。インフルエンザの治療薬と同じ仕組みで、ガノデリン酸が抗ウイルス作用を発揮する可能性が示されました。
霊芝の抗ウィルス作用に関する論文。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) April 30, 2019
“Inhibition of neuraminidase by Ganoderma triterpenoids and implications for neuraminidase inhibitor design”
(霊芝成分によるノイラニミダーゼ阻害と新薬デザインの可能性)
抗インフルエンザ薬と同じく、ノイラニミダーゼという酵素を阻害しました。
双方の研究は、2020年現在、「ガノデリン酸」で検索するとトップページに詳細を紹介する情報が見つかります。多少専門的な内容ですが、そのうち2つを以下リンクさせて頂きました。
・ガノデリン酸の標的タンパク質
・マンネンタケ科キノコから抗インフルエンザ薬のリード化合物発見
当研究グループの研究成果まとめと展望
上記の2つについてが、最も大きな研究成果ですが、その他も様々な研究を実施しています。
私共の研究グループで実施した霊芝に関する研究成果。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) May 3, 2019
・抗腫瘍作用
・抗インフルエンザ作用
・前立腺肥大症状の改善
・メンタルヘルスの改善
・ACE阻害活性(血圧上昇抑制の可能性)
他の研究グループも含めるとメタボ全般や認知機能の改善も。多くの物質が含まれ多様な効果があります。
近年は栽培についても研究しています。ガノデリン酸を多く含む栽培条件や生育段階が徐々に分かりつつあります。以下の通り、大きく立派な霊芝に有効成分が多く含まれる訳ではないようです。
霊芝に関する一番新しい論文。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) May 2, 2019
“Changes in content of triterpenoids and polysaccharides in Ganoderma lingzhi at different growth stages.”
(各成長段階でのガノデリン酸とβグルカンの変化)
霊芝の有効成分は成長段階で劇的に違いました。同じ霊芝でも作り手で大きく違う可能性があります。
霊芝を含有する製品の開発
キノコといっても、霊芝は非常に固く、とても苦いです。そのため、サプリメントとして販売されていることが多いです。
霊芝コーヒー
苦味を生かして、コーヒーに利用している製品もあります。九州の宿泊施設として有名な阿蘇ファームランドさんより、ガノデリン酸の化学構造もパッケージに掲載されていました。
共同研究先の阿蘇ファームランドさんより、ツイートでも良く紹介している、霊芝とヤマブシタケを配合しているコーヒーが届きました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 10, 2019
特に霊芝は苦く、双方の有効成分は熱水でないと抽出が難しいので、コーヒーへの混合はナイスアイデア。
パッケージに化学構造が記載しているのも嬉しいです。 pic.twitter.com/MyaoK2mD7p
パッケージだけでなく、中にも化学構造を記載した説明書きが含まれていました。さらに、当研究グループの研究者の顔写真も掲載されていました。
昨日ご紹介させて頂いたキノコ入りコーヒー、パッケージを開けてみると、なんと自分の顔写真が。私が考えたコメントも一部ご採用頂いています。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 11, 2019
霊芝、ヤマブシタケともに、様々な症状に効果のあるキノコなので、サイエンスにも興味を持って頂き、多くの方の健康に役に立てればと思いました。 pic.twitter.com/lU4k6NdrTQ
霊芝サプリメント(購入リンク)
私たちが研究開発の隅々まで関わったサプリメントが製品化されています。自然縁のホームページより購入可能です。
昨年末頃より紹介していた霊芝サプリメントが販売開始になりました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 7, 2019
ガンの手術のため退職したスタッフがいることを社長にお話しましたところ、1袋をご提供頂きました。
そういえば、基礎研究、臨床試験、成分分析、処方案までも当研究グループが関わることは稀で、世に出るのは感慨深いです。 pic.twitter.com/j4peBJgTls
一般的なサプリメントとは全く異なる製造方法を採用しています。研究者しか思い付かないような発想で、その製法が採用されることはないと思ったのですが、良い製品へのこだわりにより、理想的な加工方法に辿り着きました。
民間企業は、当然のことながら、利益を追求されます。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) April 29, 2019
ですが、研究者の提案を真に受けて、効果を優先して開発された製品があります。
分析値や製法まで、包み隠さず表現されておりました。製品への自信を感じます。
多くの方々の悩みを解決することを期待します。https://t.co/A3fg91Vcnd
この製品は徐々に知られつつあり、地元の情報誌にも掲載して頂きました。近い将来、この「ガノデリン酸」が広く知られる日が来るかもしれません。
野生の霊芝発見と成長記録
慣れていないと見つけることはできないようですが、中国の山奥にだけ生息している訳ではなく、私たちの身の周りにも生育しているようです。
学生さん(@ishiken821)よりプレゼントされた霊芝。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) April 26, 2019
何と、大学と同じ町内(飯塚市柏の森)で採れた天然もの。
販売価格は数千円以上?
人工栽培が難しく幻のキノコのようなイメージがあったのですが、街中から離れていない場所で採取できるのは驚きでした。非常に硬いですが、生命力を感じます。 pic.twitter.com/8EApNZfoPx
比較的街中でも霊芝が見つかるようです。学生さんから、大学近くに霊芝が生えていると教えてもらい、成長過程の写真が随時送られてきました。その様子は愛おしくも感じられます。
学生さん(@ishiken821)より、野生の霊芝の写真をもらいました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 25, 2019
野生の霊芝も、今は成長段階のようです。
研究室で育っているものよりも、黒く逞しいような感じもします。
どちらも、立派な霊芝に成長してほしいなと思いました。 pic.twitter.com/ESt2A45kCz
先日、学生さん(@ishiken821)から教えてもらった野生の霊芝について、さらに成長している様子の写真が送られてきました。もうオトナの一歩手前といった雰囲気。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) July 4, 2019
これが、大学から徒歩圏内にあったというのが驚きです。
ちなみに、近畿大学の地方キャンパスの中では比較的都会の方だと思います! pic.twitter.com/NDV6g8x9Qh
学生さん(@ishiken821)より、野生の霊芝について続報がありました。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) August 4, 2019
研究室栽培の霊芝も大人になりましたが、野生の霊芝も立派になっていました!
栽培霊芝と違い、胞子が洗われたのか、霊芝らしい美しい光沢が見られます。
例年より小さいようですが、野生らしい生命力を感じます。 pic.twitter.com/roABHJqKsA
霊芝は栽培できます!
人工栽培が難しく、幻の薬用キノコという印象の霊芝ですが、比較的容易に栽培することも可能です。
研究室で育てている霊芝栽培キット(?)は、通販等で購入できるシイタケなどの栽培キットよりも安価とのこと。しかも、採取できるキノコの末端価格は数以上。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) July 10, 2019
研究用なので一般で購入できるか分かりませんが、高価な霊芝の手が届きやすくなり、成長も楽しく、流通されるのを期待したいと思いました。
その経緯は、ツイートでも紹介していました。新鮮な空気と太陽光が必要というのは、キノコの常識とは違うものでした。立派な霊芝に成長しました。
霊芝を栽培中です。
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 8, 2019
霊芝の赤ちゃんといった感じでしょうか?その効果を感じさせる、神秘的な雰囲気があります。
オリジナリティーはないので「近大霊芝」と呼んだりできないですが、まずは上手く生育するか確認し、その後、生育段階毎の有効成分含量を測定する予定です。 pic.twitter.com/d7rPYKLsXU
当研究室で育てている霊芝が、真っ白な状態から、わずか1週間程度で、少し霊芝らしい雰囲気が漂ってきました。霊芝の思春期といった感じでしょうか?研究員の情報では、明るい場所でないと失敗作になる(鹿角霊芝の形になる)とのこと。湿った場所を好まない、少し風変わりなキノコのようです。 pic.twitter.com/4rhQ9vnomB
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 13, 2019
研究室で育てられている霊芝が立派になりました!
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) July 9, 2019
前回のツイートが約10日前なのですが、傘も開いてしっかりと霊芝の姿に。
販売されている製品のような黒光りはないですが、特に難しい管理をせずに栽培できたことに驚きです。
研究では、この時期くらいの有効成分が最も多くなっていました。 pic.twitter.com/uBq8lztG1w
研究室で栽培されている霊芝が立派な大人に!
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) July 22, 2019
胞子が傘の上に乗っているので、市販の霊芝のように黒光りしていませんが、布のような美しさがあります。
共同研究者に聞くと、胞子があれば、さらに繁殖可能な技術が当研究グループにて習得されたとのこと。
育種の展望も開け、夢が広がります。 pic.twitter.com/I3BrAEgPMN
二酸化炭素濃度が高くなったり、太陽光が少ないと、傘が小さく、細長くなるそうです。鹿角霊芝は、霊芝の中でもさらに幻の霊芝と言われて販売されることもありますが、実は、人工栽培の失敗作とのことでした。
九大霊芝!?
— 大貫教授@食品研究者 (@k_ohnuki) June 4, 2019
と呼ぶことはできないかもですが、
九州大学にて栽培された霊芝。
失敗作だそうですが、趣のある形をしています。
大きな立派な形の霊芝が効果があるという訳ではなく、どの時期に、どの場所に有効成分が多く含まれるか研究中。より効果の高いサプリメントを追求しています。 pic.twitter.com/yMBujIAUBb