認知機能試験の種類と進め方

当研究グループでは10以上の多くの認知機能を評価する方法を試行錯誤してきました。被験者さんの負担や有効性を検出できた実績を勘案し、主に下記の認知機能試験を実施しています。実施のためには特定の用紙等が必要になりますので、それらは指導者から受け取って下さい。

Mini Mental State Examination-Japanese (MMSE-J)

MMSEは、認知症スクリーニング検査のグローバルスタンダードの検査で、MMSE-Jはその日本語版です。質問と課題は11の項目に分類され(下記参照)、認知機能を評価することができます。検査は、試験者が問題を読み上げ、被験者はそれに口頭で答えたり、用紙に記入したりして回答します。MMSE-Jの得点(30点満点)は以下の3段階で評価されます。

  • 28-30点:異常なし
  • 24-27点:軽度認知障害の疑い
  • 23点以下:軽度認知症の疑い

*MMSE-Jの結果のみで認知症かどうかを診断することはできません。
MMSE-Jの11項目
時に関する見当識、記銘、注意と計算、再生、呼称、復唱、理解、読字、書字、描画

ベントン視覚記銘検査 (Standard verbal paired-associate learning test; S-PA)

S-PAは、視覚記銘、視覚認知、視覚構成能力を評価する図版記銘のテストです。被験者には数種類の無意味図形が描かれたカード(下記の図版例を参照)を10秒見せて覚えてもらい、その後カードを伏せて、白い紙に図形の形・位置・大きさなどを出来るだけ正確に描くよう指示します。カードは10枚あり、10点満点で成績をつけます。

標準言語性対連合学習検査

標準言語性対連合学習検査は、言語性記憶を把握するための代表的な検査方法の一つです。日常使用しているわかりやすい言葉が記憶素材として用いられ、課題を理解することも容易なうえ、正しく再生できた単語の個数を採点するので評価もしやすい検査です。

有関係対語(意味的に関連のある単語)10対と無関係対語(意味的関連が希薄な単語)10対で構成されており、それぞれを3試行ずつ実施し、各対語共30点満点で評価します。試験者は10対の単語を読み上げ、被験者はそれを記憶し、続いて試験者が最初の単語のみ読み上げ、それと対になる単語を被験者が回答します。

結果の判定は、被験者の年齢別(55~64歳、65~74歳、75~84歳)に各対語試験の3回目正答数から「良好/境界/低下」と判定され、各対語試験の判定から総合判定「正常/境界/異常」が示されます。

新ストループ検査Ⅱ

文字の情報と色の情報が異なるとき、脳の中で混乱が起き、反応が遅れてしまう現象を「ストループ効果」と言います。色の情報よりも文字の情報を処理する速度が速いために、色を答えるのに文字の情報がノイズとして混じってしまうためだと考えられます。ストループ課題遂行中の高齢者の脳では、認知症発症と関与する部分が活性化することが知られているため、認知機能検査の一つとして利用されています。

4つの課題で構成されており、各課題の実施前に練習試行を10秒行い、被験者が課題を十分理解してから本試行を行います。本試行の実施時間は各60秒です。また各課題の達成数から誤答数を引いて正答数を求め、さらにその正答数から逆ストループ干渉率、ストループ干渉率を求めて評価します。