本ページで説明する「研究レビュー」とは、機能性表示食品を申請するための文献調査で、「システマティックレビュー、systematic review(SR)」とも呼ばれています。
本ページでは、主に内部メンバーに向けた研究レビューの作成方法について説明していきます。研究レビューをご依頼されたい際にはこちらのページをご覧ください。
初めて研究レビューを担当する方を対象としているので、慣れている人は大部分を読み飛ばせると思います。
研究レビュー実務の概要
機能性表示食品に関する研究レビューは、消費者庁のサイトに一般の方でも分かりやすい情報があります。パンフレットに説明されている通り、研究レビューの作業は「文献調査」と「様式への入力」が中心です。
機能性表示食品の届出における機能性は、臨床試験もしくは研究レビューによって評価されていますが、その内訳は約9割が研究レビューによる届出です。科学的根拠の質の向上は、研究レビューの方法の正確さと個別研究報告(論文)の質の評価によって達成されます。
弊社の内部メンバーにおきましては、該当のDropboxを共有してもらい、担当者は食品成分別にフォルダを作成してください(新規にフォルダを共有するのではなく、既存の研究レビュー用の共有フォルダ内にフォルダを作成してください)。Dropboxの共有フォルダに入っている、他の食品成分に関する届出資料を参考にしてください。
研究レビュー(SR)作成の準備
初めて研究レビュー作成を担当する人には膨大な作業量と感じるかと思います。まずは以下の準備を早目に(目安としては1週間以内、できれば1~2日)終わらせてください。
- 機能性の方向性を確認(PICOの設定)
- 既存の届出情報を確認(届出情報を検索とダウンロード)
- 記入する様式の確認(完成版の確認とダウンロード)
- 文献検索の準備(文献調査データベースの確認や試用)
- 参考となるテンプレートの入手(Dropboxの共有フォルダより新しいものを1~3本分)
SR依頼内容の確認とPICOの設定
クライアント様からの依頼より、届出を出したい(表示したい)食品の機能性について内容を確認します。その依頼内容を元に、表示したい内容(ヘルスクレーム)を確認し、適格基準となるPICOを設定します。
P: participants
参加者(対象者):どのような参加者の試験を適格としたか
I: inteventions
介入:どのような介入あるいは曝露の試験を適格としたか
C: comparators
比較対照群:何と比較した試験を適格としたか
O: outcomes
評価項目:何をアウトカム(評価項目)とした試験を適格としたか
PICOの概念は最初は難しく感じるかもしれませんが、以下のBMIを例に考えると、それほど難しいことではありません。Iは成分、Cはプラセボであり、PやOは目的とする機能性(効果)となります。
例)BMIを下げる機能が目的の場合
P:BMIが高めの健康な成人
I :〇〇の摂取(機能性関与成分)
C:プラセボの摂取
O:高めのBMIの改善(Pと同様に、健康の増進につながるアウトカムのみを指定)
機能性表示食品の対象となる研究は、『疾病に罹患していない者(未成年者、妊産婦(妊娠を計画している者を含む。)及び授乳婦を除く。)を対象としているもの』であることとされています。
境界域者とされる者(検査値が病者に近い者)についても、健常域者として対象者に含むこともあるので、消費者庁の機能性表示食品における軽症者データの取扱いに関する調査・検討事業報告書で対象者を確認します。(アレルギー・尿酸・認知機能の対象者について記載されています。)
既存の研究レビューを確認する
消費者庁のHP内にある、『機能性表示食品の届出情報検索』を使い、同様の関与成分や機能性について届出がないか確認します。PDFでダウンロードできるので、参考となる完成版をいくつかダウンロードして確認してDropboxに入れてください。網羅的に探す必要はなく(古い書式は参考にならない時も多く)、新しい方から2~3本程度で構いません。
クライアント様からの依頼により、既に参考とすべき届出が指定されている場合もあります。その場合は、参考となる書式が1つとなります。研究レビューとして利用すべき論文が指定されている場合もあり、それらもDropboxに入れてください。
既存の届出がある場合、届出日の新しいものから確認し、採用文献を確認します。
①届出年度を指定する。(なるべく最新の届出を確認する)
②機能性関与成分を入力する。
③表示したい機能性を入力する。

④検索結果が表示されたら、届出日を確認し、なるべく最新のものを参考にする。
(届出が撤回になっているものは、撤回の欄に撤回日の記載があるので、届出が
撤回になっていないかも確認してください。)
⑤詳細をクリックし、基本情報のページを開く。

⑥基本情報のページをスクロースすると以下のような表示があるので、参照したい様式
を開く。

⑦様式V:機能性の科学的根拠を開き、「別紙様式(V)1~16を確認される場合はこちら→
ファイル」のファイルをクリックし、別紙様式(V)を確認する。
⑧別紙様式(V)ー4 に記載されている採用文献を確認する。(採用文献リストがあります。)
研究レビュー様式の確認やダウンロード
前述の通り、Dropboxの共有フォルダには参考となる完成版のファイルが多くあります。届出様式は消費者庁のサイトから入手できます。様式は1~2年毎に改定されますが、面倒でも念の為、毎回最新版をダウンロードして利用したほうが安心です。
様式をダウンロードするとアルファベッドや数字が並んで分かりにくいので、「様式V-4(物質名)」など、そのままクライアント様へ送信しても分かりやすい言葉に修正をしてDropboxに入れてください。

基本的には別紙様式V-4、V-5~16、Ⅶ-1を作成しますが、先方からの依頼がある場合はその都度依頼のあった書類を作成します。
※上記は2023年版で、現在は様式が異なっています。
文献調査の準備
英語文献の調査にはPubmed、日本語論文の調査には医中誌を主に利用しています。医中誌のログイン方法は指導者にお問い合わせください。以下が公的なマニュアルになります。
- 医中誌の使い方:医中誌Web 検索ガイド (jamas.or.jp)
- PubMedの使い方:pubmedmanual.pdf (u-tokyo.ac.jp)
医中誌を用いず、JDreamなどを用いる場合は、補足として和文誌も掲載されているcochraneを併用することが多いです。採用している文献がマイナー誌収録の場合、医中誌ではヒットしないこともあるので、その場合はCINIIを用いたりハンドサーチを取り入れます。
基本的には、Googleなどと検索方法は似通っています。自分の担当する研究レビューに近い言葉で一度検索をしてみてください。関与成分と作用(上記PICOの例の場合はBMI)で検索すると、細胞や動物での実験も含めて非常に多い場合もあります。PICOのCに該当する言葉(placebo, placebo-controlled, double blind, RCTなど)で検索すると、かなり本数が絞られます。研究レビューに必要な論文がいくつか見つかることでしょう。
Pubmedでの検索方法詳細
英語文献データベースであるPubMedの検索もGoogleなどと同様に実施できますが、研究レビューの検索式に反映する際には多少違った知識や方法が必要です。検索ボックスの左下に見える「Advanced」をクリックしてください。

次の画面の下部に「History and Search Details」という項目があります。その「Details」にある「>」マークをクリックすると、詳細が表示されます。
placeboという言葉を検索するためにも、複雑な内部処理がされていることが分かります。届出資料には、この複雑な検索式(文字列)を使います。コピー&ペーストだけでなく、テキストデータ(CSV形式)としてダウンロードも可能です。
様式V-5や様式V-4の#7には、この複雑な検索式を利用します。

その他のデータベース
Pubmedや医中誌は、積極的に投稿された論文が掲載されていますが、実施してお蔵入りになっている研究も少なくありません。未報告の研究も反映することが望ましいとされており、以下のデータベースも利用しています。
- The Cochrane Library:国際的な非営利団体によるデータベース。検索する際はAdvanced Serch下にある「Serch Manager」のタブをクリックしてください。
- ICTRP:WHOの臨床試験データベース。英語での検索になります。ヒット数は都度メモをしてください。
- UMIN-CTR:日本の臨床試験データベース。日本語で検索が可能です。ヒット数が多くなると数を把握することが難しく、スペースで区切ったAND検索が当初から必要になることが多いです。ヒット数が自動で出されず、数える必要があります。
それぞれに多少の違いがあり慣れが必要ですが、医中誌やPubmedと同様の要領で進めてください。
プロトコールの作成
これまでの作業で、完成イメージができて記入すべき書式が分かり、検索をするツール(Webサイト)も把握できたと思います。実際の検索や書類を作成するに際して、「プロトコール」を作成する必要があります。
プロトコールはプロトコルとも言われ、文脈により様々な意味合いがありますが(IT業界では通信方法、臨床試験では研究方法など)、研究レビューでは「作業方針」のような意味合いがあります。最近は「プロトコル」の方が一般的になりますが、機能性表示食品の手引書にも「プロトコール」と書かれており、表現や意味合いを、以後は「プロトコール」(≒作業方針)に統一します。
機能性表示食品の研究レビューにおいて、主に以下のプロトコール作成が必要です。
- レビューの目的対象者:前述PICOの「P」に対応
- 介入:前述PICOの「I」に対応
- 比較:前述PICOの「C」に対応
- 評価項目:前述PICOの「O」に対応
- 採用・除外基準
- 検索方法
- バイアスリスク評価方法
- エビデンスの統合方法
採用や除外基準などはどの研究レビューでも概ね共通しているので、既存の完成版を参考にして担当している研究レビューに当てはめて、様式V-4の「#4 目的」および「#5 適格基準」に反映させてください(#1は、すぐに記載できますが、#2と#3は全体像が必要であり、検索等の後の方が書きやすく、まずは様式V-4 #4から進めることをお勧めします)。
文献検索の着手
利用するデータベースは決まっていると思いますので、様式V-4「#6 情報源」に反映させてください。
以下の要領で文献検索を実施します。
- 文献検索サイトにて、検索式を立て文献を検索します。 (他の届出を参考にする際は、検索式がコピー&ペーストにならないように注意する。)
- できれば10件以上、数十件~100件程度になるように絞り込みます
- 検索式や文献数を様式V-5(Excelファイル)に記入します
- すべてのデータベースについて様式V-5を作成した後、様式V-4「#7 検索戦略」に反映します(続く#8~10はテンプレートとPICOの内容で記入が可能です。#12~#15についても一般的な研究レビューであればテンプレートを採用できることが多いです)
- 上記が落ち着き次第、もしくは並行して様式V-6の作業に進みます
1次スクリーニング
検索結果が0になる場合や、極端に少なくなる場合は、絞り込みはせずタイトルアブストラクトの目視によるスクリーニングを行います。
例)PubMedでの検索によるタイトルアブストラクトの目視によるスクリーニング
①「Display options」をクリックし、フォーマットで「Abstract」を選択する。

②「Summary」では、タイトルや著者のみの表示ですが、「Abstract」を選択すると以下
のようにアブストラクトが表示され要約された内容を読むことができる。

スクリーニングを行う
・上記の手順でアブストラクトを確認し、1次スクリーニングを行う(要約された内容を読んで、明らかに目的の内容ではないものを省く)
・1次スクリーニングが終わったら本文を入手して2次スクリーニングを行います (文献入手に料金が発生する場合は指導者に相談)
採用文献と除外文献の選定
本文の内容がPICOに合致しているか、原著論文であるか査読付き論文であるかを確認し、採用文献と除外文献を決めます。(採用文献、除外文献ともにDropbox内のフォルダに保存しておきます。)
アウトカムを検証するためのアウトカム指標(アウトカムの評価方法)が、表示しようとする内容と齟齬がないかどうか、また、広くコンセンサスの得られた指標であるかどうかを、考察のところで述べないといけないので、そのあたりも説明可能かどうかもうっすら意識しながら進めるのがおすすめです
(主観的な指標によってのみ評価可能な機能性の表示も対象となりえますが、その指標は日本人にとって妥当性が得られるか、かつ、当該分野において学術的にコンセンサスの得られたものでなければなりません。広くコンセンサスの得られた指標であることを参考文献などを用いて説明する必要があります)。
◎査読の有無について
「査読付き」論文とは、学会誌やその他の学術誌に審査を経て掲載に至った論文のことです。「査読」とは、研究者が学会に論文を投稿する際に、あらかじめ同じ分野で仕事をしている他の研究者による評価を受けることです。論文の質、ひいては会議や論文誌の質を保証する役割を担います。査読の結果”採録”と判定された論文のみが、発表されます。
◎査読付き論文の見分け方
論文内に『received 〇〇(日月)』、『accepted △△(日月)』と書いてあれば、査読付きと判断できます。その論文が〇〇日に提出されて、△△日に審査に通って掲載が許可されたことを意味しています。


