血液検査マニュアル

ここでは血液検査の測定項目、予備知識、機器とその測定項目、事前準備を解説したのちに分析方法について紹介します。主にメタボリックシンドロームの評価や安全性試験で用いられる評価項目に関する測定になります。これ以外の評価項目は、ELISA法や外注で実施する場合もあります。

主な測定項目

  • HDL:善玉コレステロール(余分なコレステロールを解消)   
  • TC:総コレステロール
  • TG:中性脂肪
  • UA:尿酸
  • GLU:グルコース
  • CRE2:クレアチニン
  • UN:尿素窒素
  • Alb:アルブミン
  • TP:総タンパク
  • GGT、ALP、AST、ALT:肝臓の状態を数値で表したもの

「目利き臨床」や「目利き臨床プラス」では上記測定項目、「過剰摂取安全性試験」「長期安全性試験」では血球測定を追加します。
必要に応じてHbA1cやELISA分析などを実施します。

用語説明

  • 全血:採血したままの血液、全ての成分を含みます。
  • 血清:血球とフィブリノーゲン、凝固因子を除く上澄み液のことです。
  • 血漿(けっしょう):血球を除く上澄み液で、フィブリノーゲンや凝固因子を含むもののことです。
  • 血餅(けっぺい):血球とフィブリンから成ります。
  • 血球:赤血球、白血球、血小板のことです。

使用機器

以下の3つの装置を主に利用しています。以下、❶機器名 ❷測定項目 ❸使用する液体の種類の順に箇条書きしています。

  • SPOTCHEM 
  • 生化学(肝機能、腎機能、脂質代謝などに関連する項目)
  • 電解質・血清
  • ALc GearK
  • HbA1c
  • 全血
  • pocH-80i
  • 血球
  • 全血

事前準備

  • 試薬は全て冷蔵保存ですが、使用時には室温に戻す必要があります。おおよそ30分程度かかるので、測定前に予め室温に戻しておきます。
  • 検査機器のキャリブレーションにも多少時間が掛かるので予め電源を入れておきます。
  • 以下のものを用意しておきます。
    • ピペットマン
    • チップ
    • 試験管立て
    • チューブ立て
    • 1.5mLチューブ
    • 油性ペン
    • 70%エタノール
    • アルミホイル
    • キムワイプ
    • オートクレーブ用バック
    • マスク
    • プラスチックグローブ

分析方法

  1. 試薬を冷蔵庫から取り出し、各機器の電源を入れます。開封済み試薬と未開封ストックは、それぞれ別の冷蔵庫に保管します。SPOTCHEMは、背面のスイッチで電源を入れて正面の電源ボタンを長押しして起動させます。pocH-80iは右手側面のスイッチで電源を入れると自動で洗浄を開始します。
  2. 病院で採血し、検体をICE BOXに入れて持ち帰ります。
注意
血液検査が異常値になることを防ぐために、モニター様には採血前12時間は絶食していただきます。特に血糖値やTG(中性脂肪) は食後に値が高くなります。
  1. 血清(1本だけサイズが大きく、キャップが茶色のもの)を遠心分離します。AS ONEの遠心機(3000~3500rpm)で5分間遠心し、血餅を沈殿させます。

※測定機器と同じ机の上で遠心すると振動により測定に影響が出る可能性があるため、遠心分離は別の机の上で行います。

1で行っていなければ、ここで試薬を室温に戻し、機器の電源を入れます。

4の操作は機器や使用する液体によって異なるため、それぞれ別々に紹介します。

SPOTCHEMでの血清電解質・生化学測定

  1. 遠心した血清の上清を専用キュペットに500mL分注します。
  1. スタートボタンを押し、検体・試薬・チップをセットする参照液(電解質測定時に使用します。)はフタを開けてセットします。

※新しい箱の試薬を使用する場合、付属のカードを機器上部右側のリーダーで読み込み、試薬のロット情報を登録する必要があります。

  1. スタートボタンを押して測定を開始します。
  2. 測定終了後、試薬・検体・破棄チップ用受け皿を70%エタノールで消毒し、正面右の電源ボタンを長押しし、シャトルダウンしてから背面の電源を切ります。

一回の測定につき電解質+マルチ試薬1つ+シングル試薬の測定が可能です。

マルチ試薬は3種類あり、測定できる項目は以下の通りです。

  • Metabolic:HDL,TC,TG,UA,GLU,CRE2              
  • Liver: ALB,TP,GGT,ALP,AST,ALT                 
  • Kidney: UN,UA,TP,ALB,CRE2

よって、Kidneyの項目のうちUA,TP,ALB,CRE2はほかのマルチ試薬でも測定できるため、電解質、メタボのマルチ試薬、肝臓のマルチ試薬、UNのシングル試薬を使用すれば一通りの項目を測定できるので、2回測定すればよいです。

(例)

  • 一回目の測定:電解質+メタボのマルチ試薬+UNのシングル試薬
  • 二回目の測定:肝臓のマルチ試薬

Alc Gar KでのHbA1および血糖の測定

  1. 室温に戻した試薬を転倒混和します。
  1. キャビラリーをセットする部分の試薬のフィルムに穴を開け、専用のチップとキャビラリーを試薬にセットします。専用のスタンドを使用するとよいです。
  2. キャビラリーに全血を採取し、試薬にセットします。キャビラリーの先には穴が開いており、毛細管現象によりキャビラリーの先が検体に触れるだけで必要分の液体が採取できます。転倒混和の後検体(全血)のキャップを開け、キャップの裏側に付着している検体を採取するとよいです。
  3. 必要に応じて検体IDを入力し、機器の全面部を手前に引いて開け、検体と試薬をセットしてタッチパネル上でスタートを押し、測定を開始します。1検体のみの場合は、レーンNO.1(一番右のレーン)にセットします。

※新しい箱の試薬を使用する場合、付属のカードを機器全面のリーダーで読み込み、ロット情報を登録する必要があります。

  1. 測定終了後、検体・試薬・チップを破棄し、背面スイッチで電源を切ります。

pocH-801iでの血球測定

  1. 必要に応じて検体IDを入力し、「push」部分を押して開け、転倒混和した検体(全血)をキャップごとセットし、フタを閉じて画面上のスタートボタンを押して測定を開始します。
  1. 検体を破棄し、画面上のシャットダウンを押します。
  2. 数分後、洗浄を終えたら側面のスイッチで電源を落とします。

5以降は4のどの場合にも共通します。

  1. 保存用に血清を1.5mL tube 2本に500mLずつ注入し、冷凍保存します。
  2. 検体が付着した医療系廃棄物はオートクレーブ用の袋にまとめ、オートクレーブ後に医療系廃棄物として破棄します。

血液検査の基準値

以下の数値は、実際のメタボリックシンドロームに関する試験の結果をもとにExcelで作成したダミーの数値を用いた数値とグラフです。