サプリメント(機能性表示食品)の開発:全体的な費用やスケジュール等

研究開発の一般的なパターン

これまで数百の製品や素材に対して研究開発の支援をしてきました。最近数年間の臨床試験を実施する理由について、大部分が以下に該当します。

機能性表示の取得、もしくは景品表示法の対策に関する依頼が多くを占めています。臨床試験だけでは情報が不足することもあり、周辺の研究や文献調査などが必要な場合があります。

既に販売しており、効果が明確な製品を機能性表示する

2015年に機能性表示の制度が始まってからは最も多い依頼になります。既に効果が明確であったり、特に販売実績のある製品に対して、機能性表示の届け出をするようなパターンです。

十分な効果が認められるので、届け出をせずに表示の許可してもらいたい気持ちにもなりますが、所定の研究や多少面倒な書類作成が必要になります。このようなケースでは、以下の3つに大きく分けられます。

科学的根拠が十分な場合:研究レビューの実施

費用の目安:100~300万円

期間の目安:実務の納期3~6ヶ月、受理まで1~2年

臨床試験、成分分析、作用機序の研究が揃っているパターンです。費用や期間の面から考えると最も運が良いケースになります。逆に言えば、既に他社が同様の機能性表示をしていたり、後から同様な製品に追従される可能性が高いケースになります。

実務としては、機能性表示の届け出書類を作成しつつ、研究的な要素としては届け出に必要な関与成分の分析になります。分析がしやすい物質については、10万円未満で食品分析センター等で受託して頂ける場合があります。

機能性表示の研究レビュー部分(届出様式V)について、私共に丸投げして頂く方が安価かつ早く進むことと思います。既に他社が受理しているような成分であれば50万円で実施が可能です。

届出様式を揃えるだけでも大変な作業ですが、届け出をしても必ず受理されるとは限りません。数年間、拒絶されたケースもあります。一般的には、2~3回差し戻しがあり、素直に指摘に従えば1~2年間で受理されることが多いです。差し戻しの際の対応やアドバイスはコンサルティングでお引き受けしていますが、軽微な場合が多く、無償対応しているケースが大多数になります。

ヒトでの根拠が不十分である場合:臨床試験の実施

費用の目安:300~500万

期間の目安:実務の納期6~12ヶ月、受理まで1.5~2年

多くの物質が混合している食品、物質が変化していく発酵食品、生鮮食品、独自性のある製品などが該当することが多いです。十分に効果のある製品でも、既存の研究論文には病者を改善する研究しか存在しない場合、健常者(境界域の方も含む)で臨床試験をする必要があります。製品の中に含まれる物質の1つを関与成分とする戦略もありますが(前述のパターン)、後発製品が追従しにくいといった利点もあります。

この場合の臨床試験は300万円で実施していることが多いです。期間も、機能性表示の可否は報告書の前に分かりますので、開始から3~4ヶ月で判断できることもあります。

機能性表示の届け出のためには、論文の執筆が必要です。和文論文の場合50万円で納期は4ヶ月としていますが、最短2ヶ月程度で投稿できる場合もしばしばあります。

上記と同様、他の書類作成や関与成分の分析も並行して実施することで、論文の受理と同時に届け出が可能です。研究レビューよりも臨床試験を実施した方が、早く受理されやすい傾向にある印象があります。

関与成分が不明確な場合:成分の探索研究

費用の目安:100~500万

期間の目安:実務の納期半年~2年、受理まで1.5~3年

サイエンス部分で考えると(コストやスケジュールの面からも)、最も厄介なパターンになります。数年、十数年の歳月を経て関与成分の同定に至った研究も多く見てきました。この場合は、機能性表示の届け出に割り切って、最短・最小限で進める方法をご提案しています。詳細は関与成分の分析に関するページにて説明をしています。

関与成分を数種類決め打ちして、食品分析センター等で分析可能な場合、50万円未満で実施可能な場合があります。宝探しのように探索的に進める場合は、まずは網羅的な分析を実施して、それから関与成分を絞っていくような流れになります。どちらにしても、まずは事前に周到な文献調査が必須になります。

臨床試験を同時並行して実施することも可能ですが、関与成分が分からない段階では研究レビューが実施できず、前述の2つのパターンと違って同時並行できる部分が限られます。研究着手から機能性表示ができるようになるまで2~3年を目安と考えた方が良いです。

広告の表現と一致する科学的エビデンスを作る

景品表示法の厳罰化が始まってから数年間は、機能性表示食品の研究開発と同等に依頼の多い案件となっています。一般的には、上記の通り機能性表示の取得を目指されていたり、機能性表示を取得しない場合でも広告表現と一致する科学的エビデンスを作る必要があります。既存の研究で訴求が可能な場合は文献調査することで対応可能ですし、コンサルティングの範囲内で(場合によっては無償で)可能なことも多いです。

まだ世の中に研究がされていない素材(珍しい農作物や抽出物、発酵食品、特殊な組成など)について、エビデンスを作る方向性として主に以下の3つがあります。

臨床試験の実施

費用の目安:100~300万円(+論文50万円)

期間の目安:2~6ヶ月(+論文6ヶ月程度)

広告表現と一致する臨床試験を実施することでストレートに表現を可能にすることができます。費用と期間が多少追加になってしまいますが、研究論文を執筆して引用する形の方が各種法規を回避できる可能性が高くなります。

理想的な研究結果が出ても、広告表現には注意が必要です。薬機法によって食品が疾病を改善する表現が(実際に病気を改善したとしても)制限されており、そもそも臨床研究法により病気の方を改善するような臨床試験の実施が困難です。

成分分析の実施

費用の目安:10~300万円

期間の目安:2~12ヶ月

『〇〇という成分が△mg含まれています。』といった表現が可能になります。ビタミンやミネラルのような栄養成分であれば、かなり安価に(1成分あたり5万円未満)分析できることが多いです。また機能性表示食品に採用されている機能性成分も、5~20万円程度で分析を実施できることが多いです。

どのような成分が入っているか分からない場合は、大学や公的機関での基礎研究的な要素が必要になり、一般的には100万円以上での契約になります。半年から1年程度が目安になりますが、一定の分析を行ったあと、さらに詳細な分析が必要な場合もあります。宝探しのような研究になることをご理解頂く必要があります。

in vitro実験の実施

費用の目安:50~200万円

期間の目安:3~6ヶ月

細胞実験や酵素活性を測定することによって、製品や成分の効果効能を探るような研究になります。最近では食品で適用されることは少なく、化粧品成分での研究が多い印象です。特許を取得する際にも、臨床試験よりも安価に実施できることが多いので食品や食品成分にも採用されることがあります。