このページは、主に内部メンバー向けに肌質試験の事前準備、試験手順、装置の原理について紹介しています。肌質測定のご依頼を検討されている企業や、装置を導入されている研究機関のご参考にもなるのではと思います。
測定装置と測定原理
当研究グループでは、水分計、水分蒸散量計、粘弾性計を利用しています。肌の水分に関する指標は、以下の2つを測定します。
・水分含有量:物質中に含まれる水の割合を示す指標
・水分蒸散量:皮膚から無意識に蒸発する水分量を示す指標で、皮膚バリア機能の評価に用いられる。
粘弾性計では、以下の数値を測定することが可能です。
- 硬度
肌がどれだけ変形しにくいかを示す指標。 - 総和時間(ms)
押してから元に戻るまでの全体の時間。 - 環境湿度(%)
測定時の周囲の湿度。肌の状態に影響する条件。 - 弾性係数(kN/㎡)
変形後に元へ戻ろうとする力(弾力の強さ)。 - 深度(mm)
押し込み時にどれだけ沈んだか(変形量)。 - 傾き角度(°)
押した瞬間の変形のしやすさを示す角度。 - 粘性係数(Ns/㎡)
変形に対する“ねばり”の強さ(粘性)。 - 表面温度(°C)
肌表面の温度。硬さ・弾力に影響。 - 押す力(g)
プローブが肌を押す際の荷重。 - 粘弾性率(%)
弾性と粘性のバランスを示す割合。 - 環境温度(°C)
測定時の室温。肌の物性に影響する条件。
Vesmeter :皮膚粘弾性測定機

Vesmeter E‑100HSV は、プローブ※を皮膚に押し当てた際の
変形量(深度)・変形速度・回復挙動 を計測し、皮膚の
粘性、弾性、緩和時間、粘弾性率、硬度、深度を算出する装置です。
※プローブ(probe):皮膚に直接触れて“押し込み・変形・回復”を与える測定部
プローブが皮膚を押し込むと、皮膚は弾性成分と粘性成分の両方によって変形します。
装置はこのときの 押し込み力・変形量・時間変化 を高精度センサーで検出し、
皮膚の粘弾性モデル(Voigt モデルなど)に基づいて物性値を計算します。
以下のサイトもご参照ください。
MoistSense:水分含有量測定装置

MoistSense は、皮膚にプローブを接触させた際の
静電容量(Capacitance)の変化を利用して、皮膚表面の水分含有量を測定する装置です。
皮膚の角質層に含まれる水分は誘電率(ε)が高く、
プローブ先端の電極間に形成される電界に強く影響します。
そのため、皮膚の水分量が多いほど 静電容量 C は増加 し、
水分量が少ないほど 静電容量 C は減少 します。
MoistSense は、この静電容量 C を
C = ε × S / d
(ε:誘電率、S:電極面積、d:電極間距離)
の関係に基づいて測定し、内部の校正データと照合して
水分含有量として数値化します。
以下のサイトもご参照ください。
製品情報:水分計 Moist Sense┃コスメマイティ株式会社
VAPOSCAN AS-VT200RS:閉鎖チャンバー方式水分蒸散量測定装置(TEWL)

VAPOSCAN AS‑VT200RS は、プローブを皮膚に密着させて形成される
閉鎖チャンバー内の水蒸気濃度の上昇速度を測定し、
皮膚からの水分蒸散量(TEWL:Transepidermal Water Loss)を算出する装置です。
皮膚から蒸散した水分はチャンバー内に蓄積し、時間とともに水蒸気濃度が上昇します。
装置はこの 水蒸気濃度の時間変化(上昇カーブ) を湿度センサーで検出し、
その上昇速度を解析することで、蒸散量として数値化します。
以下のサイトもご参照ください。
水分蒸散計|日本アッシュ株式会社|ASCH JAPAN Co.,LTD
測定の留意点および機器の準備
可能な限り正確な測定をするために、留意しておくべき点を以下に列挙します。募集要項や被験者様への連絡、事前や当日の準備の参考にしてください
- 測定当日は、運動や入浴を避ける
- 測定部位に汗・水滴・皮脂などの影響がないよう、来場時に拭き取りをする
- 測定環境(温度・湿度)の急変は結果に影響するため、測定前に環境を安定させる
水分に関する2つの計測装置(水分計のMoistSenseと水分蒸散量計のVAPOSCAN)では本体に数値が出るため、複雑な準備は不要です。動作確認と入力するためのパソコンもしくは記入用紙を準備してください。
粘弾性計は、パソコンとの接続が必要であり、実験の1週間以上前に以下の準備を済ませておくと安心です。
Vesmeter E‑100HSV をパソコンと Bluetooth 接続する
パソコンの Bluetooth 画面に 「VESM2523‑S」 が表示されるので選択して接続します。

試験機器と同じ容器に保管されている USB をパソコンに挿す
USB 内のデータを パソコンへコピー します。 (※アプリを参照するために必要なデータです)

インストール済みの「E‑100HSV」アプリを起動する
アプリ内にある 「VesmeterE」 というファイルを開きます。

画面左上の歯車アイコンをクリックする
設定画面が開きます。

「ハード配置」を開く
- 「Vesmeterヘッド接続先」のデバイス名が VESM2523‑S になっていることを確認します。
- チェックを入れます。
- 「全て表示」 にもチェックを入れます。

「参照」をクリックする
計測データの保存先を指定するための操作です。

計測データ用のファイル名を入力し、保存先を作成する
任意の名前を入力して、新しい保存先フォルダを作ります。

保存先として「ドキュメント」にフォルダを作成する
作成したフォルダを選択し、データ保存先として設定します。

測定対象と測定部位を設定する
測定する被験者名と部位を入力します。

測定の進め方と機器別マニュアル
一般的に、肌の評価を実施する際には多角的に調査や測定を実施します。被験者様が来場の際にはリラックスしてもらうことを心掛け、測定部位の拭き取りから開始をしてください。
続いて、質問紙を実施します。拭き取りの影響を最小限にするため、また肌を室内環境に順化させる意味合いもあります。肌の改善を評価する質問紙はVAS(Skin Condition Visual Analog Scale)が最も良く使われます。肌の改善により睡眠、気分、ストレスなども改善することが多いので、OSA-MA、POMS、DASS21なども併用されることが多いです。質問紙の詳細はこちらのページも参照してください。
測定機器は、肌に影響が少ない、測定時間が短く被験者様への負担が少ないといった観点で順番を決めていきます(テストバッテリーという概念に基づいています)。本ページで紹介している装置はどれも肌や被験者様への負担が少なく、ですが、測定の順番や方法が決まれば全ての測定日で全員同じ様に測定をしてください。
Vesmeter E-100HSV
1. 電源を入れる
測定を開始するために装置を起動します。
- 装置上部のボタンを長押しして電源を入れる

2. 測定準備を行います
装置を測定待機状態にします。
- 装置下部のボタンを押して測定準備モードにする

3. Ready 状態を確認し測定を開始する
装置が測定可能状態になったら皮膚に押し当てます。
- 下図の指定部分をクリックし、表示が Ready になったことを確認
- 測定部位に装置をまっすぐ押し当てる
- ※測定中はできる限り傾けないよう注意する

4. 測定結果を確認する
装置に表示された測定値を確認します。
- 測定後、画面に表示される結果を確認する

5. パソコン側でデータを保存する
測定データをPCに記録します。
- PC画面にも測定結果が自動表示される
- コメント欄に被験者の年齢など必要情報を入力
- データ保存をクリックし、入力後に OK を押す

6. 保存先のExcelファイルを開く
事前に設定した保存先のファイルを確認します。
- 測定データが保存されているExcelファイルを開く
- ※この時点ではデータが1つのセルにまとめて入力されている

7. 区切り位置でデータを整理する
Excelでデータを項目ごとに分割します。
- Excelの「データ」タブ → 区切り位置 を使用
- 測定データを項目ごとに整形する

MoistSense
・この装置では水分含有量を測定します。
1. 測定前準備
- 電源ボタンを押し、装置を起動します。
- 起動直後はキャリブレーション(自動補正)を実施中のため、
測定部には触れないでください。
※触れると測定誤差が発生する可能性があります。
2. 待機状態
- キャリブレーション後、表示部に 「–」 が表示されます。
- この状態で測定を行わない場合、約60秒後に自動的に電源が切れます。
3. 測定手順
- 測定したい部位に、測定部を軽く押し当てます。
- 押し当てると測定部のスイッチが入り、測定が開始されます。
- 測定時間は約2秒間。
この間は ブザーが鳴るまで測定部位から離さないでください。
4. 測定終了と表示
- 測定が終了すると ブザーが鳴り、結果が表示されます。
- 測定結果は 約60秒間表示 されます。

VAPOSCAN AS-VT200RS
・この装置では水分蒸散量を測定します。
1. 測定前準備
- 装置の電源を入れ、ウォームアップを完了させます。(SDの点滅がなくなるまで待ちます。)

- プローブ表面をアルコールで清拭し、完全に乾燥させます。
- 測定部位の皮膚を清潔・乾燥状態にし、クリーム・汗・水分を除去します。
- 測定環境(温度・湿度)が安定していることを確認します。
2. 測定手順
- 測定部位にプローブを垂直に軽く接触させます。
- プローブを皮膚に密着させると、閉鎖チャンバー内が密閉され、内部の水蒸気濃度変化の測定が開始されます。
- 装置が自動的にチャンバー内の水蒸気上昇カーブを取得し、蒸散量(TEWL)を算出します。
- 測定中はプローブを動かさず、一定の圧で保持してください。
3. 測定後処理
- 測定結果を記録する。画面の右上の数値が水分蒸散量です。(下図の場合は7.0)

- プローブをアルコールで清拭し、次の測定に備えます。
- 異常値が出た場合は、皮膚の汗・動き・密着不良を確認し、再測定します。

