本マニュアルは、AIを活用して臨床試験の報告書を効率的に作成する方法を、実際の作業履歴に基づいてまとめたものです。主に内部メンバーに対して作成していますが、卒論・修論・博士論文などアカデミックな論文作成にも利用できる部分が多いと思います。
これまでは数週間の時間を要していた報告書作成が、AIとの協働により大幅に短縮できます。ファイルの読み込み・統計解析・報告書作成等をする実務担当者としてAIが機能します。担当者の役割は、方向性の判断・内容の確認・最終責任が主になります。
AIを使わない頃の報告書作成のマニュアルもありますので、そちらもご参照ください。
使用するAIとデータ解析準備
Claude(https://claude.ai)の利用を奨励します。2026年6月現在、これらの作業を一貫して可能な唯一の普及型AIになります(比較対象:ChatGPT、Copilot、Gemini、Qwen、Grok、Julius、Powerdrill)。Claudeは使用制限が厳しい(多くの作業ができない)ので、ChatGPTなど他のAIを併用することをお勧めします。
ClaudeはWordやExcelのファイルを直接読み込んで処理でき、日本語の科学的・論理的な文章の生成精度が高く、統計計算からファイル生成まで可能です。大学アカウントを持っている方は、CopilotやGeminiもExcelファイルによるデータ解析と出力が可能です。
報告書の作成では、Claudeでも数十回以上のやりとりとファイル処理が発生します。無料プランはメッセージ数や処理量に制限があるため、Proプランの使用を推奨します。無料プランでも不可能ではないですが、5時間毎の利用制限があり、何度も制限がかかることで数日を要することもあります。
AIを活用する報告書作成の全体的な流れ
報告書の作成は、大きく分けると以下の流れで進めます。実験計画の時点からAI利用を想定することによって、作業を大幅に削減することも可能です。
データの入力と整形
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AIによるデータ解析
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AIによる報告書の作成
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図表の貼り付けと清書
全体的にAIによる代行やサポートが得られますが、人手が必要な部分も残っています。
質問紙や測定値の数値化
数値入力の段階でも、劇的にAIが作業を改善してくれます。PDFや写真からの数値抽出は、Claude以外でも、ChatGPTやGrokなどで可能であることを確認しています。Claudeは無料枠がシビアなので、この部分は他のAIで進めることも選択肢です。
実験を実施している段階で、数値をExcelに入力している場合もありますが、紙に出力されたりPDFで情報が提供されることも多いです。当研究グループは質問紙での実施も多く、AI(パソコン)が読み込むことができるよう、スキャナーもしくはカメラでデータとして取り込む必要があります。
POMSやOSA-MAなど広く使われる質問紙であれば、ファイル名に方法が書かれているだけでClaudeが判断してくれます(例:「POMS事前測定」など)。他のAIでもPDFからデータを読み込むことはできますが、POMSが何かを理解せずに読み込むので精度が低いです。Claudeであれば、尺度変換までExcelに出力してくれることも多いです。
VASの入力は手作業をお勧めします。数直線から読み取ってもらうことも可能ですが、処理に負担が大きいようで、時間がかかり、有料版でも制限がかかってしまいます。そのため、当研究グループでは、すべての質問紙についてパソコンから回答できるようにしています。
Excelへのデータ入力
各評価項目のデータが揃ったら、AIが処理しやすいようにExcelデータを整形します。この部分もClaudeに任せることが可能ですが(他のAIはExcel出力が苦手です)、作業時間は多くて数十分程度ですので(AIでの実働は少ないですが待ち時間を含めると同様になり)、Claudeに負担をかけずに人手で実施することも可能です。
人間が理解しやすい入力フォームと、コンピュータが処理しやすいデータの並び方は異なっています。Claudeであれば、乱雑な入力フォームでも上手く扱ってくれることが多いですが、負荷が高くミスも発生することがあり、やり直しを求めることもしばしばあります。多少の整形をするだけで、Claudeの負担を軽減することができて、他のAIでも解析可能になることが多いです。
以下のルールでデータを整形することをお勧めします。

- セルを結合しない、結合があれば解除しておく
- 1つのセルには1つの数値のみを入力(複数の数値や余計な文字を入れない)
- 欠損値は空欄も可能だが、一番上のセル(項目など)は空欄にしない
- シートは事前・事後など測定時期で分けずに1シート構成として、列を新しく設けて時期を記載する(上記のbefore, after)。Claudeであれば、事前と事後が別シートや別ファイルであっても統合や解析可能
- 上記は群(YとG)が揃っているが、群分けがランダムになっていても問題ない。Claudeであれば、群分けファイルとデータがファイルが別であっても統合してくれる
- Claudeも含めてAIがセルの色を読み取れないため、色による判別をしない
- 日本語の記載でも読み取ってくれるAIも増えてきたが(Claude以外にもChatGPTやQwen、Grokで確認済)、英語で記載する必要がある場合も
CSV形式の出力
Excelファイルを読み込むことのできるAIが増えてきましたが、無理であれば、CSV形式で出力して読み込ませることで、解析が実施できます。添付ファイルを扱えないローカルAI(自分のパソコン上で動くAI)等でも、CSV化したものをコピー&ペーストすることで解析が可能になります。そのためにも、シートやファイルを分けずに、1シートでデータを記述しておくことが重要です。
ExcelからCSVの出力は以下の要領で可能です。
- Excelファイルを開く
- 「ファイル」メニューをクリック
- 「名前を付けて保存」を選択
- ファイル形式を変更
- 画面下部の「ファイルの種類」をクリック
- 「CSV(カンマ区切り)(*.csv)」を選択
- ファイル名を入力
- 例:「trial_data.csv」
- 保存をクリック
事後測定の前に準備をしておくこと
事前測定や中間測定の段階から、事後測定が終了次第迅速にAIによる解析ができるよう、上記の項目は事後測定の前に完了させておいてください。
AIによるデータ解析は、待ち時間も多いですが、半日未満で完了します(実際に手を動かしている時間は1時間未満になると想定します)。報告書が迅速に進められるよう、以下の準備も完了させておいてください。
- 報告書や図表のテンプレート:測定項目と合致するよう
- 依頼主の正式社名:法人種別や前後を間違えずに
- 摂取したサプリメントの情報:有効成分の用量や粒数など
- サプリメントの摂取期間:月日ではなく2026年1月~2月で可
- 試験実施場所:名称と住所
また、データとテンプレートにより報告書が円滑に作成されるかなど、過去のデータを参考に一度試してみることをお勧めします。最も時間や労力が必要になるのは、AIの性質を把握していないことによる失敗や余計な回り道です。AIの進歩は文字通り日進月歩でありますので、このマニュアルで懸念していることも、あっさりと解決することも少なくないかもしれません。日頃からAIに相談することや試用を進めておくことが成功の近道です。
データ解析
ExcelもしくはCSVでデータの準備ができたら、AIにデータ解析を依頼します。Claudeが最も確実ですが、他のAIでもグラフ作成まで可能です。QwenやGrokも平均値やそのデータ解析まで、Excelを読み込んで解析を実施可能です。
ExcelなどOfficeファイルを出力まで実施するのは、2026年4月時点ではClaude以外のAIは苦手としていました。ですが6月現在、技術員が担当するレベルの平均値や標準誤差、グラフや表をExcelに書き込むまでの作業をしてくれるのはClaudeのほかChatGPTやGemini、Copilotの有料版なども可能になりました(大学アカウントからのGeminiやCopilotでも可能であることを確認)。他のAIも解析結果をテキストファイルやCSVで出力してくれるので、それらを1つのフォルダにダウンロードしておくことで報告書作成に使うこともできます。
主なデータ解析(平均値、標準誤差、t検定p値の算出)
以下、一般的な解析の流れになります。
- データ入力が完了したExcelファイルをアップロードして、まずは「解析してください」と指示
- 解析の種類を求められる際には、前後のt検定、群間のt検定、前後差を群間でt検定を指示
- 提示された解析結果を確認し、Claudeの場合はExcelでの出力を指示
- グラフは折れ線グラフ(横軸を決め、事前・事後とする。試験品群とプラセボ群を分けて表示)で出力させる
- グラフ付きのまとめExcelだけでなく、個人ごとの生データを必ず残すこと(報告書でAIが生データを参照することも多いです)
複数の評価項目があることが多いと思いますが、AIも人間も混乱するので、ある程度別ファイルにすることをお勧めします(血液検査、認知機能、肌質測定など意味がある範囲で1つのファイルに複数あっても問題ありません)。
追加のデータ解析(分散分析や多重比較など)
これまでは一般的な若手研究者でも難しく、教員クラス(准教授や教授)の方々に依頼していた統計解析が、AIのお陰で気軽に実施できるようになりました。報告書の際にはオプション対応となって必須ではありませんが、学位論文の際には非常に重要な解析結果になり得ますし、良い結果が出た場合は民間企業向けにも喜ばれます。
追加の解析は、主に分散分析です。事後測定に有意差がある場合、前後差を群間で比較したp値に有意差がある場合、分散分析でも有意差が検出される場合が多いです。以前は特別な解析ソフトウェアが必要でしたが、見込みのある評価項目に対して「〇〇について、分散分析を実施して」の一言で解析を実施してくれます。その解釈が分からくても、AIに根掘り葉掘り聞くことができます。
臨床試験で有効なのは共分散分析です。漢字で書くのは面倒なので、「〇〇をANCOVA」の一言でも可能です(分散分析はANOVA)。この解析は、個人差や事前値に差がある場合などに有効で、信頼される解析の1つです。その出力データも、同じフォルダに保存しておきましょう。
データの解釈
Claudeであれば「解析して」の一言だけで、データの解釈までしてくれることが多いです。例えばPOMSのデータであれば、追加の説明を一切せずに「TAやDDの値が有意に低下して、プラセボと比較して事後の値のみに有意な差があります。また前後の差でも、群間で有意差が出ています。TAは緊張や不安、DDや抑うつや落ち込みの指標であり、不安や鬱傾向が改善されていることが示唆されます。」といったことまで説明してくれます。またどのAIも、p値が0.1未満を有意傾向ありとして扱ってくれるので、全体像が把握しやすいです。
AIの結果を鵜呑みにせず、ですが参考にしつつ解釈を考えてください。評価項目が多いと忘れるので、メモしておくと良いでしょう。また鵜呑みにできないのが、結果が悪かった時です。良い結果が出なかった時、「サンプルサイズが小さい(人数が少ない)」、「摂取期間が短い」といった言い訳をします。例数(人数)や期間については適切な条件で実施しているので、それらの考察はAIが苦し紛れの間違いをしていると判断してください。
報告書の作成
これまで説明してきた作業(データ抽出、データ解析)についてはClaude以外のAIでも可能ですが、報告書を実用レベルまで作成できるのは2026年6月現在、Claude(Sonnet4.6、Opus4.6以上)一択です。
他のAIでも、それらしい出力は可能ですが、テンプレートを無視した書類になってしまいます。企業向けの報告書、卒論や修論などでもフォントや文字の大きさやレイアウトの指定があり、Claudeであればそれらを正確に反映できます(Claudeでも負担が大きいのか不備が残り、何度か間違いを指摘することになります)。
他のAIも文章の作成は可能です。無料版でも、それなりの質で出力してくれます。所定の場所にコピー&ペーストするのは苦行のように感じるかもしれませんが、レイアウトを整えることも含めて1時間未満で終わるのではないかと思います。
テンプレートの添付
なるべく完成度の高いテンプレートを準備することが、望む報告書になることの近道です。評価項目が共通していることや、実験デザイン(単群もしくはプラセボ比較、中間測定の有無など)が似ているテンプレートを提示することで質の高い報告書になりやすいです。
1つの報告書では不足する場合、2つの報告書を提示することもあります(3つ以上は試したことがないのですが、多すぎると混乱するのではと想定します)。
以下、簡単な作業の流れになります
- テンプレートのWordファイルを添付します。
- 添付するテンプレートは2群比較試験か単群試験かによって変える。どちらも添付してもClaudeが判断してくれるため問題ありません。
- 同じ質問紙を使用した試験の報告書などがあれば、そちらも添付することで報告書の完成度が高くなります。
以下は報告書のテンプレートです。結果(表・グラフ)や考察は例として挙げていますが、Claudeが表現もトーンも参考にして、実際の結果から導かれる内容を反映してくれることが多いです。
① メタボリックシンドローム試験の報告
②メンタルヘルス試験の報告書テンプレート
1つのテンプレートWordファイル、1つのデータExcelファイルであれば、1回の指示で上手く報告書を書き上げてくれる場合もあります。ですが、これは人と同じ様に、丁寧なコミュニケーションで上手くいくことが多いです。まずは「テンプレートを送ります。報告書はこのテンプレートを参考に、フォントや文字の大きさ、レイアウトも反映してもらいたいので、詳細まで確認をしてください。」といった感じで、過剰な期待をせずに、詳細を伝えてください。
解析結果Excelの添付と報告書の修正
いよいよ報告書が作成される段階になります。解析結果のExcelファイル等をClaudeにアップして報告書作成を依頼をしてください。結果のExcelファイルは、これまで最大7つを送っても問題なく報告書を作成してくれました。テンプレートをアップするとClaudeがデータを求めてくることが多く、先ほど作成した解析結果のExcelを全て添付します。
報告書作成を依頼すると、質問を受ける場合があります。この時点で丁寧に答えておくと後々楽になることが多いので、随時、答えてください。
データや解釈が複雑でなければ、一発で完成版に近い内容になることもあります。Claudeに依頼するほうが待ち時間がながくなることもありますが、修正を依頼する方向性として、以下が候補です。
- 初回はテンプレートを無視することもしばしばです。その際は「テンプレートを忠実に再現してください」といった指示をしてください。
- データの重み付けや順序を上手く理解してくれることもありますが、バラバラになる時もあります。その際は、「血液検査をはじめに示して、その後に質問紙のデータを紹介してください」といった指示で結果の紹介する順序を変えてくれます
- Excelのデータがt検定のみを掲載している場合、その結果を参考に解釈してくれます。分散分析などの結果も解釈に反映したいのであれば「このファイルも参考に、ANCOVA(共分散分析)で有意差があったことも説明と考察をしてください」と伝えてください
- 前述の通り、結果が良くなかった場合は、例数や摂取期間に批判的なコメントを残す場合があります。その場合は、「例数や摂取期間は妥当であり、○○に対しては効果がなかったという方向性で結果と考察を示してください」と伝えてください
図表の作成
文章やレイアウトについては、かなり高い完成度で報告書を仕上げてくれることが多いです。ですが図表については、一般的な報告書や学位論文のクオリティを満たさないと考えた方が良いです。図表はExcelなどで別途作るということも選択肢ですが、こちらもテンプレートをClaudeに提示して(他のAIでは難しいことを確認しています)、作成をサポートしてもらうことが可能。
図表の書き方は、各組織での作法があり、それを第一にしてください。当研究グループのテンプレートは、以下からダウンロード可能です。
数値入力や報告書の作成は、簡単な指示で劇的な作業をしてくれるのですが、こういった細かい作業は苦手です。まずは「テンプレートの一切変更せずに、平均値と標準誤差、p値を所定の場所に入力してください」「横軸は時間で事前と事後、縦軸は測定値、折れ線グラフで作成してください」。と可能な限り具体的な指示をしてください。一発で正しい図表を作ってくれることは稀で、追加の指示が必要です。
- まずはレイアウトを崩してしまうことが多いです。「レイアウトの変更は一切禁止です。」といった感じで、絶対的であることを伝えてください
- それでも、レイアウトは崩れます。「〇〇の部分に線が入っています」「〇〇の部分に線が足りません」といった感じで具体的に指示を出してください
- それでも治らない場合は、諦めた方が得策です。手動で変更することが問題なくなった時点で、深追いしないことをお勧めします
- テンプレートを忠実に守ろうとして、拡張をできないこともあります。その際は「テンプレートは5項目ですが、今回のデータは7項目なので、列を追加してください」といった指示が必要になります
- 1つ上手くいったら、同様な作業をすることは得です。次々とExcelファイルをアップ、図表の作成を指示してください
可能な限り、「データ解析」で得られた数値を活用をする方向性が望ましいですが、特に行き当たりばったりで(AI利用を前提とせずに)進めた場合については、AIが元データを参照して計算をする場合もあります。そうすると、報告書の数値や解釈と図表に齟齬(食い違い)が出ることがあります。
最終仕上げ
直前で説明した通り、報告書の本文と図表が異なっていることは解釈にも関係することなので、十分に確認をしてください。問題がないことを確認したら、本文へコピー&ペーストして、報告書を完成させます。
図表の確認と並行して、報告書の内容を精査してください。これについては、報告書作成の経験が十分にある方にチェックをしてもらう必要があります。
報告書や学位論文のチェックポイントとしては以下になります。
- テンプレートや指定のレイアウトから崩れていないか
- 文字が詰まりすぎているところなど読みにくい場所や不自然な箇所が見当たらないか
- 各段落の始めは1文字程度落とすなど、一般的な日本語書類作成のルールに則っているか
- 評価項目が多い場合は、過剰な説明になっていないか(AIが全ての考察を反映しようとする傾向があるため)
- 自省や自己批判するような内容(例数が少ない、摂取期間が短い、投与量が少ないなど)が書かれていないか(最重要)
最終的な段階では、チャットを使って部分的な修正をすることが難しくなっていると思います。その際は、WordのアドインにClaudeを追加(ホームメニューの一番右側より)することで、部分的な修正もClaudeに頼むことができます。これは、Pro(有料版)のみの機能です。本家、Microsoft Copilotの有料版でもAIを呼び出すことができましたが、2026年4月時点では、ファイルの直接書き換えには対応していませんでした。

